俺たちのナイル川の取水に無関心でいられるわけがない

水戦争inエジプト。


エチオピアへの「妨害工作」、エジプト政治家らがテレビ中継知らずに議論 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
わーものすごく愉快なことになってるー。

 リベラル政党のガド党(Ghad Party)のアイマン・ヌール(Ayman Nour)党首は、エジプトが軍用機を購入しているといううわさを流してエチオピアに「圧力」をかけるよう提案した。

 さらにヌール氏は、「(エチオピアの)内政に干渉する必要」があると述べ、エチオピアに政治、情報、軍のチームを送るべきだと提案。エジプトをより強く支持しないスーダンの姿勢を「うんざりだ」と非難した。

 また、イスラム法の厳格な順守を掲げる光の党(Nur Party)のユーネス・マフユーン(Yunis Makhyun)党首は、ダムが「エジプトに戦略的脅威」をもたらすものであり、エジプト政府がエチオピアの反政府勢力を支援することで「エチオピア政府に圧力をかけることができる」と要求した。

エチオピアへの「妨害工作」、エジプト政治家らがテレビ中継知らずに議論 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

まぁこれが真にエジプトの国家による本気の謀略なのかというと、やっぱりそれも違うのでしょう。野党だって居るわけだし。
――ただ、それでも、この何気ない「雑談」にさえ出てくるという点で、今回のそれは彼らの心的距離という点を間接的に証明しているのかなぁと。ついうっかり口走ってしまったことこそ、それは「本音」であるのだと。
エチオピアの反政府勢力を援助してやろうぜ(笑)」
この(笑)的な意味で、それが簡単に雑談にあがるというレベルで、彼らにとってのいわゆる「水戦争」は限りなく日常にあるのだということがよく解る――そして水に困らない私たち日本とは隔絶した所にあることがよく解るお話でありますよね。彼らにとってまさにそれは生死の掛かった現実の問題であるのだと。


その意味で、こうして危機感を抱くエジプトさんち――特に「春」の結果として生まれた新政権の皆さんの気持ちも解らなくはないんですよね。だって、まさに当時から言われていたように、革命に火をつけた最初の要因の一つは小麦の高騰による「パンの不足」だったわけだから。彼らはまさに当事者として、その食糧不足による暴動の恐ろしさを知っているわけで。そして革命後のエジプトでも同じく、現在直面している危機の一つとして、実際に小麦の高騰に悩んでもいる。
そんな中でナイル川からの灌漑に頼るエジプト農業にダメージを与えかねない上流域での迂回路建設=取水に彼らが無関心でいられるわけがない。まさに彼らはそれが国民のパンという意味でも、そして自分たちの政治生命という意味でも、それを無視するわけにはいかない。
ということで、今回の騒動の原因の一つであるエチオピアのアフリカ最大級のダム建設が表に出てきて以来、もうずっとエジプトさんちの頭痛のタネだったわけです。


といってもまぁこんなことは世界中にある国際的な河川で見られる光景ではあります。まさに水は日常生活の為に必要というだけでなく、食べていくための農業としても、豊かになる為の工業にも必須の資源である。
水戦争なう - maukitiの日記
故に「21世紀は水戦争だ!」なんて言われるわけで。
世界人口の40%が、二ヶ国以上で共有する214本の国際河川水系に依存している。例えば、お互いに対岸を分けあっている構図ならば両国は妥協と共存もできるかもしれない。しかし、ほとんどがそうであるように、もし上流と下流という関係性だった場合、そしてその国家間のパワーバランスに著しい差がある場合、一体どうやって公正に分配できるというのか?


それこそかつての日本でもあったように、しばしば、「水争い」は村と村の間でさえ血みどろの争いになったわけです。実際その遺恨は現在までも伝わっていたりもする。しかしそうした緊張状態は、暴力装置を独占支配した国家権力によって(強制的に)和解することになった。
では、一体、絶対の上位権力などない=すべての国家が平等であるこのすばらしき世界で、どうやってその争いを調停すればいいのか?
基本的にはそんな水資源分配の悩みと無縁でいられる私たちは、エジプトの彼らのその謀略談義(笑)を笑うことなんてできないよなぁと。


がんばれ人類。