原点回帰しつつある欧州危機の打開策

『想像の共同体』をもう一度。


労働者の「圏内大移動」が欧州を救う | ビジネス | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
ちなみに僕も欧州連合の未来は、結局のところ、21世紀版「民族大移動」しかないと思っております。

 為替レートが国の実力に応じて変動しないユーロ圏では、経済破綻した国だからといって通貨が安くなり、それによって外から投資や仕事を呼び寄せられるということがない。だとすれば、人のほうから動くしかない。実際、それが今ヨーロッパで起こっていることだ。

 スペインの王立エルカノ研究所の調査によると、30才未満の若者のうち約7割が国外へ移住することを考えていると言う。ポルトガルに至っては、過去2年間ですでに人口の2%が移住している。自国を捨て国外に出る人の数は2008年から倍増しているのだ。

(略)
 こんな社会現象の話を聞くと、欧州経済はますます悪くなっていると思うかもしれない。だが、EUの高官は「圏内移民」こそ、欧州が経済危機から脱却するカギになると言う。アメリカと比べて労働者の圏内移動が少ないことは、彼にとって黙って見過ごせない深刻な問題なのだ。

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実際、それはほとんどの国家でかつて経験した事態ではあるんですよね。産業時代、共通の教育と都市部への移動という混交を通じて人々は一つの国民であるという意識を醸成していった。そして国民国家へ。転じて現在のヨーロッパ合衆国はそうした経験を経ているのかというと、まぁあんまりない。もちろんそんなことをしなくても――現代の人びとは理性的なので――と、かつての推進者たちは考えていたんでしょう。だからこそ彼らは統合の象徴として、ユーロなんていう無茶を熱狂的に推し進めていたわけだし。
――ところが、そんなヨーロッパの統合はエリートたちの思惑とは裏腹にまったく進まず、むしろ現在の経済危機に際し彼らは「同じ」ヨーロッパ市民であるはずギリシャなどを救うことに感情的な激しい反発を露呈してしまっている。
『想像の共同体』の核となるもの - maukitiの日記
そんな『象徴』を探求する彼ら。まぁ上記EU女王は中々いいアイディアだと思いますけども、やっぱりこれはジョークの域を出ないだろうなぁと。それなんてハプスブルグ。

いかにしてユーロ通貨は象徴となったのか - maukitiの日記
金持ちと貧乏人ばかりが流動するヨーロッパ - maukitiの日記
これまでの日記でもちょくちょく書いてきたお話ではありますが、やっぱり『ヨーロッパ市民』を生み出すには、これまでは半ば絵に書いた餅に過ぎなかった「往来の自由」がより現実のものとして機能するかどうかに掛かっている。というかもう選択肢はそれしか残っていないんじゃないかなぁと。その意味で、このEU高官とものすごく同意見であります。
かくして、経済対策としても、そして欧州統合のプロセスとしても、古き良き手段に頼るしかなくなっている人びと。人びとを混交させることで、一なるヨーロッパ市民を生み出すしかない。本来新しい試みである欧州連合が、その実とっても古臭い国民国家の手法に頼らなければいけない現状と言うのは、皮肉なお話であると同時に、なんだか愉快なお話ではあります。


がんばれヨーロッパ。