ルペンショックはもう一度やってくるか?

もう一つの「歴史的」共和国の苦しみ。



オランド仏大統領の支持率、過去最低に 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

昨日の日記でもネタにしたように、アメリカの債務危機に伴う党派政治のぐだぐだ、というのは最近では最も注目されるニュースの一つであります。民主主義の始祖の一つであるはずのアメリカ民主主義政治の劣化。ただ私たち日本でも長年嘆かれ続けているように、それってまぁ別にアメリカに限った話ではやっぱりないんですよね。

【10月15日 AFP】フランスのフランソワ・オランド(Francois Hollande)大統領を支持する人の割合が、4人に1人未満に低下し、過去最低を記録したことが分かった。

 統計調査会社イプソス(Ipsos)が仏誌ルポワン(Le Point)向けに今月行った調査によると、オランド氏の支持率はわずか24%で、同社が1996年に仏大統領支持率の月例調査を開始して以来、最低となった。

オランド仏大統領の支持率、過去最低に 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

それこそもう一方の「歴史的」共和国であるフランスも状況としてはかなり似たり寄ったりするわけで。つまるところ、右にしろ左にしろ既存政党がどうしようもなく国民の信頼を失った結果、少なくない票が「第三の道」へと流出しつつある。かくしてあの2002年の際には、大統領選挙ではルペンさんを決戦投票にまで進出させ、慌てふためいてそれを圧倒的反対(80%というバカげた数字で)によって落選させた、というものすごく愉快なことをやっていたわけです。
この構図が問題なのは、民主主義でしばしば見られる投票手続きの一つである「相対多数の原則」について、致命的に問題があることを証左してしまっていて、それがまったく公正な選挙にならないところにあるんですよね。たいていの場合はそれでも上手くいくんですよ。しかしそうでない時もある。つまり、あの時のフランスのように事実上勝つはずのない候補=極右のルペンさんの支持票が存在することによって、予備選挙の結果が決定的に歪められることになる。この構図では、決戦投票にさえ残れば勝利できるのだから、最終的に「ルペンに票を奪われなかった」人物が勝利することになる。
アメリカのそれとは違う意味で、フランスの民主主義が危機に瀕している、というのはこういうお話があるからなんですよね。




さておき、ところがどっこい、2007年になるとそんなフランスの悩みは霧散しました。国民戦線は2002年には決戦投票進出までも果たしたものの、しかし2007年の大統領選挙ではそれはもうあっさりと敗北したからです。でもそれは別に、フランス国民や政治家が正気を取り戻したから、とかそういう問題ですらなかったんですよね。
つまるところ、サルコジさんがそんな国民戦線の票田を根こそぎかっさらったから。彼は元々国民戦線にあった反移民的な政策をほとんどそのまま自身の手で強調することで、従来の右派支持者層の支持を獲得した。まぁもちろんそれは反発もあったわけですが、しかし市民の危機意識に上手く訴えることができた国民戦線のやろうとしていたことを、より政治的に上手い形で訴え彼は大勝利を収めたわけです。確かに国民戦線に勝たせるよりは、よりマトモなバック=政党に属するサルコジさんのほうがまだマシだというのは良く解る結論であります。
http://www.worldtimes.co.jp/news/world/kiji/131012-170512.html
――で、翻って現在、サルコジさんが事実上失墜してしまった今、再びフランスの政治は「サルコジ以前」に戻りつつある。このままではまた2002年の「ルペンショック」が繰り返されかねない。特に昨今の欧州経済危機や、『アラブの春』による不法移民(難民)の増加はそうした声を更に大きく後押ししてもいるわけで。さて、アメリカと並ぶ世界に誇るべき「歴史的」共和国たるフランスの民主主義は、これから一体どうなるんでしょうね?




がんばれフランス。