移民はつらいよ

またフランスさんちのお話。


15歳ロマの少女を学校行事中に拘束・送還、仏閣内に亀裂 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News
なんてひどいお話でしょう。さべつださべつだー。おわり。


ちなみにこのひどいニュースで、一番根が深いよなぁと思うのが次の部分であります。

 レオナルダさんの1日前に強制送還された父レシャット(Reshat Dibrani)さん(47)は、一家はロマ民族だったために犠牲となったと主張する。「フランスには、悪い移民がたくさんいる。私たちは何も悪いことはしていない。強制送還されたのはロマだからだ。肌の色が違ったなら、こんな扱いはされなかっただろう」

15歳ロマの少女を学校行事中に拘束・送還、仏閣内に亀裂 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News

「悪い移民がたくさんいる」
――と強制送還された人でさえそう言っているという事実。だから正しいとか言いたいわけではなくて、国民戦線のような極右な人びとが政治的に支持されている背景には、結局こういう土壌もあったりするんですよね。つまり、もし仮にフランス人が差別的だと言うのならば、それはそこに移民してきた人々だってそれと同じくらいには、別の移民たちを邪魔な存在だと思っている。アラブ人はアフリカ人を、アフリカ人はアジア人を、アジア人はアラブ人を、が多過ぎて社会の混乱の源になっていると考えている。
移民自身でさえ、もう移民が多すぎるからこれ以上増えて欲しくないと思っている現状。かくして彼らの一部も「(移民を追い出して)町をキレイにしよう!」と叫ぶルペンさんの国民戦線に共感したりするのです。
いやぁ笑っちゃいけないんですけども、端から見ている分には苦笑いするしかありませんよね。





ともあれ、まぁ現代フランスの日常風景の一つではあります。反移民な態度を鮮明にしていたサルコジさん時代「だけ」がヒドかったわけではまったくなくて、それこそ以前の社会党政権時代からフランスは「反移民」とは言わなくても明らかに、移民法などの改正を通じて抑制しようとしてきたのは間違いないのです。右派にしろ左派にしろ、どう見ても移民が多すぎる、というのはかなりの部分まで両者共通の了解事項だった。
そんな中でのサルコジさん時代の反移民的な態度は、逆説的なお話ではありますが、ああして政府が「率先して」やることで国民感情という面へのガス抜きがされていたとも思うんですよね。政府が対応を約束しているのだから、とりあえずは見守ってやろう的な構図。

 フランスでは前月、バルス内相が「国内にいる2万人のロマ民族の大半はフランスに同化するつもりがなく、祖国に強制送還するべきだ」との趣旨の発言をし、物議を醸した。世論調査では仏有権者の4人に3人がこの方針を支持しており、バルス内相の人気は高いが、こうした発言を差別的だと批判する声もある。

15歳ロマの少女を学校行事中に拘束・送還、仏閣内に亀裂 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News

ところがこうして政権交代がなされることで、そんなブレーキも外れてしまいつつある。
といってもまぁこうした移民流入に悩むのはフランスばかりではなく、特にあの『シェンゲン条約』以降、ヨーロッパの裕福な国ではどこでも等しく見られる光景であります。経済が悪化するとその流入が更に加速し、受け入れ側の住民感情は更に悪化する、という負の連鎖。
差別が社会問題の域に達していない - maukitiの日記
だからこそ、上記先日の日記でも書いたように、こうしたヨーロッパの現状をして、日本のそれを比較するのは正直まったく同じレベルで語られるお話ではないよなぁと思うんですよね。だってそもそも両者の置かれている状況は違いすぎるから。ネオナチみたいに外国人をリンチやら襲撃することなんて、(少なくとも現状ではまだ)ほとんどないと言っていい。
なのでこれまでも書いてきたように、ぶっちゃけてしまえば日本人のそれは『差別』というよりはむしろ無知からくる『無邪気』である、というお話に近いのかなぁと。もちろんこれはこれで議論されるべきお話ではあるのでしょうけども、しかしだからといって必ずしもヨーロッパのこうして現状と比較して、日本のそれが殊更に状況が悪いわけでもないんじゃないかと。