約束された大気汚染

政治問題だからこそ解決しないお話。


社会総動員の変革が必要な中国の大気汚染 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
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北京1日滞在=たばこ21本、大気汚染が深刻化 : 環境 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
ということで衝撃的な写真と併せて話題になっている中国さんちの大気汚染のお話であります。一日でたばこ21本分だそうで。おっそろしいお話であります。


しかしまぁ昔から指摘されてきたように、ある意味で当然の帰結ではあるんですよね。大抵の場合、所謂『環境問題』は民主主義形態の政府を持たない国ほど、激しいものとなってしまう。だって幾ら一般の人びとの批判や不満があろうが、しかしそうした国々では彼らにはそれを修正するだけの政治的なインセンティブが生まれないから。
逆説的に、だからこそこの辺は民主主義政治の利点そのものなんですよね。別に民主主義が問題そのものの発生を抑止するわけではなくて、その後の「修正能力」こそが決定的な差異となる。民主主義政治は危機の立ち直りにこそ、その機能を発揮する。政策の瑕疵を問うような比較的自由なメディアと、そして定期的な選挙こそが。まさに私たち日本にも過去似たような光景はあったわけですが、しかし大多数の人びとの賛成によって、そうした環境問題は徐々に解決されていったのです。
――一方で皆さんご存知の通り「あの」中国さんちでは、まぁ当然の結果として、その問題が解決される見込みなんてあるはずもなかった。


その意味では、このお話って「環境問題」であり「経済問題」であり「技術的問題」であると同時に、結局のところより根本的には「政治的問題」なんですよね。
特に最近ではタイミングの悪い事に、あの『アラブの春』の中国版を恐れる彼らは、住民の反発を懸念しその問題を認めることさえもできなくなっている。

 米国大使館は2008年の北京五輪前から、北京などでPM2・5の独自測定を行い、公表している。北京市も昨年初めから試験的に測定・公表を始めたが、北京市の判定で「良」なのに米側は「不健康」とする日もあり、評価はしばしば大きく食い違う。市民の間では「市当局がデータを改ざんしている」との批判が噴出。外務省は6月、内政干渉だとして米大使館に公表中止を求めたが米側は応じず、10月には北京市も、観測ポイントを大幅に増やして正式なデータの測定・公表を始めた。

北京1日滞在=たばこ21本、大気汚染が深刻化 : 環境 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

ところがアメリカ大使館さんちが(敢えて)空気読まずに独自発表で大気汚染の度合いを発表することで問題に火をつけた。かくしてそれを「内政干渉だ!」と怒る中国さん。まぁ確かに多分に悪意があるのはその通りなのでしょう。それでも、だからこそ、愉快なお話でもあるんですけど。


まぁこの辺は尖閣のそれと似たような構図――下手に妥協すると政府批判に繋がりかねない――にあって、だからこそ彼らはその問題を現状維持するしかない。中国さんちの政治体制そのものに関わる問題について。
少なくとも『中国の春』の可能性が少しでもある今後しばらくは解決の見込みはないのだろうなぁと思います。かくしてそれに巻き込まれる日本。いやぁ厄介な隣国であります。