しかし、オバマは、(再び)まわりこまれてしまった!

いつかは来るだろうと思っていたけど、まさかシリアでの『ツケ』がこんなに早く解りやすくめぐってくるなんて。


モスル陥落:テロの新たな本拠地:JBpress(日本ビジネスプレス)
ということで国際ニュース方面ではワールドカップに負けないほど大きなニュースとなってるイラクであります。いやぁもう既存秩序なんて完全になくなっちゃってる感。1945年以来、元々中東の勢力均衡を担っていたのは身も蓋もなくサウジアラビアと密接な同盟関係にあったアメリカ軍だったわけですけども、彼らが役割を縮小させようとしたほぼ直接の結果として、重石のなくなった地域は再び目を覚ましつつある。
先日の日記でも書いたように、シリア内戦を見捨てた結果、その影響は「米国大統領が正式に勝利宣言をしたはずの」イラクにまで及んでしまった。もちろんあそこで動いていれば今よりマシになったなんて言うことはできないけれども、少なくともあそこでケリをつけていれば現在のイラクがこうならなかった可能性は高い。
でもまぁあくまでオバマさん自身の選択の結果なので、その辺り自業自得ではありますよね。今でも子ブッシュさんのせいにできなくはないけれども、しかし現状のISISの伸長の責任をそこに転嫁するのは少し無理があるでしょう。

 だが、オバマ大統領は、反政府勢力に資源を提供することにあまりにも後ろ向きだ。それに不満を募らせた政権内の有能なアラブ専門家の1人が辞任した。

 ISISと戦っても、結果は得られないかもしれない。マリキ首相がISISに勝利したとしても、また別の暴力的なグループがシリアかイラクの内戦の灰の中から生まれてくるかもしれない。だが、戦わなければ、中東でさらに多くの血が流れることになる。そして、世界のほかの地域も巻き込まれる可能性は極めて高いのだ。

モスル陥落:テロの新たな本拠地:JBpress(日本ビジネスプレス)

ただまぁ更なる問題としては「ここで」アメリカやヨーロッパが介入したとなれば、それは確実にイスラム世界におけるスンニ派の皆さんから恨みを買うのは確実なんですよね。実際の事実として、新生イラク政府がかなりシーア派寄りの政権運営を一方的に進めていたのもまた事実であるわけで。まず根本的なそのイラク国内におけるそんな宗派対立が土壌としてあり、その上で、ISISがその構図に便乗したわけだから。
イラク危機、中東全体に影響 - WSJ
スンニ派学者連盟、イラク進攻は「革命」 マリキ政権など批判 - MSN産経ニュース
――つまり今更になってイラクへ介入・支援するということは、シリアでは(スンニ派を)見捨てた挙句、イラクでは(シーア派の味方として)攻撃することになる。
もちろんその相手、シリアでは独裁者なアサドさんであり、一方のイラクでは一応民主的な政府であるマリキさんである、という相違点があるわけですけども、でもそんなこと実際に見捨てられた挙句に攻撃されようとしている当事者にとっては納得できる理屈では絶対にない。
では「シリアで動かなかった理由」と「イラクで動く理由」その両者の論理的整合性を一体どうやって確保すればいいのか? 
そしてそのように動くことをイスラエルに、サウジアラビアに、イランにどのように説明するつもりなのか?
前米国大統領であった子ブッシュさんであれば(バカげているほどに)解りやすく決断したでしょうけども、しかし賢いオバマさんにはそんなことはできそうにない。イラクとシリア、少なくとも宗派という視点で見れば、敵と味方がまるっきり逆になってしまった。あちらを立てればこちらが立たず。第三者としては苦笑いするしかないお話ではありますが、準当事者として責められるアメリカ=オバマさんはまったく笑えないでしょうね。まぁ宗教戦争・宗派対立に巻き込まれる第三者というのはいつだってそんなものだっていうと身も蓋もありませんけど。


前回のシリアでは上手く逃れることができたものの、しかしこうしてそのツケをより重い形で払う羽目になっているオバマさん。もちろん今回も口だけ介入で見なかったことにすることはできるでしょう。おそらくその後は、サウジかイランかイスラエルか、という更に重い選択を迫られることになるだろうと思いますけど。
しかし オバマは まわりこまれてしまった! - maukitiの日記
ついでに言うと、ウクライナでも、南シナ海でも同じことは起きるのでしょうね。つまり世界中でまわりこまれるオバマさん。アメリカが世界中で試されている。いやぁ第一次大戦前のイギリスっぽくなってきましたわ。


任期があと二年半位、逃げ切るのは無理そうですね。ということでがんばれオバマさん。