個人情報保護の帰結としての価値高騰

まぁ禁酒法時代から続くあるあるな話ではありますよね。規制によって稀少価値が上がれば上がるほど「やっちゃう」インセンティブは強くなる。


ベネッセ情報流出 派遣社員が関与認める NHKニュース
ということでベネッセさんちの情報流出では大騒ぎだそうで。
結局のところ、このお話で重要なのは「価値の上がった」個人情報という一点に尽きるとは思うんですよね。あの素晴らしき『個人情報保護法』は真っ当なやり方での情報収集を「正しく」かなり難しくした。でも、だからといって、その情報の価値が下がるのかと言うとそんなことまったくなく、だからその価格が高騰するのは当然の帰結であります。
もちろんだからといって擁護するつもりもありませんけども、だからこそその個人情報を求めて企業たちはギリギリの所まで踏み込みながら戦おうとするし、そんな稀少な情報価値は高騰を続けることになる。

これまでの調べなどから、ベネッセの顧客データベースの保守管理を委託されていた外部業者の派遣社員システムエンジニアが情報の持ち出しに関わった疑いが出ていますが、この派遣社員が警視庁の任意での事情聴取に対し、関与を認めたことが分かりました。
関係者などによりますと、派遣社員は、ベネッセのグループ会社「シンフォーム」の東京・多摩市にある事業所で、ベネッセから貸与されたパソコンを使ってデータベースにアクセスし、個人情報を複数回にわたってコピーしたとみられています。
社内調査でも、派遣社員のIDが使われてアクセスした際にデータがコピーされた痕跡が確認されているということです。

ベネッセ情報流出 派遣社員が関与認める NHKニュース

10万円で情報を持ち出せと言われたら当然断るでしょう。では、100万円では? 1000万円では? 1億だったら?
あるいは正社員だったら断るかもしれないけれど、それが派遣やただのバイトだったら? 
この待遇と価格のギャップが存在する限り、価値高騰を続ける情報流出を防ぐのは絶対に不可能だよなぁと思うんですよね。そこでは強力すぎるインセンティブが働いてしまうから。
ベネッセ個人情報ダダ漏れの件でなぜか孫正義が口出しし「お前が言うな」の大合唱 - Togetter
その意味で、「お前が言うな」と批判されまくっている孫さんのお言葉には少し同意してしまうところではあるんですよね。

個人情報をお金で売買する名簿業者が合法とされている現状に疑問を感じているのは私だけなのだろうか?
名簿に記載されている個人で売買を承認している人はどれほどいるのだろうか?

https://twitter.com/masason/status/487792423859261440

名簿業者を違法行為にするのは、無論デメリットもあるものの、一つの解決策ではあるでしょう。結局のところ合法である以上、営利企業たちはそれを「絶対に利用しない」というのも難しい決断でもあるわけで。企業たちは情報が「合法で」売られていたら、利益を出す為には、ライバル企業がそうしていたら、自身も買わないわけにはいかないんですよ。


ミスによる情報流出は話は単純なものの、問題は意図的な「情報持ち出し」を一体どうやって防ぐのか、という所なのだろうなぁと。そんな意図的持ち出しは強力な防壁も役に立たない。個人情報にはやはり大きな『価値』が存在しているわけで。例えば技術的な機密情報なんかは長年の経験からそのバランスが(こちらも日本は遅れていると嘆かれていたりしますけど)それなりに取れている方でしょう。そのアクセス制限や待遇を厚くすることで、社員の「魔が差す」可能性を少しでも減らそうとしている。
――一方で個人情報についてはまだまだ過渡期なのだろうなぁと。
これまではただ単純に「法令に違反するから」という点で対策が取られてきたそれが、徐々に「価値があるから」という点で対策を取る必要が出てきている。その対策ってやっぱり似ているようで微妙に違うんですよね。


大量の情報集積やビッグデータだのなんだのと叫ばれる昨今において、その「持ち出す」ことの金銭的メリットはやっぱり高騰を続けているわけで。
個人情報を保護した先にある世界。