PCの域に留めておいた移民議論が本来の姿を取り戻していく

「それでも移民はいらない」と言い続けた人たちはガリレオか?


移民問題が「タブー」でなくなったわけ | コリン・ジョイス | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
まぁどこの国でも「あるある」なお話と言えばその通りなのでしょうね。より率直に、移民や人種や宗教問題を語ろうとすると必ず避けて通れないPC=政治的正しさ、というブレーキ、装甲、あるいは拘束具。政治的正しさの域に留めておいたエヴァ――じゃなかった移民議論が本来の姿を取り戻していくドンドンドン(太鼓の音)。
――ぶっちゃけこのネタ*1が書きたかっただけの日記なのでもう終わっていいんですけども、でもこれだけじゃ寂しいので以下適当なお話。




もちろんそれを守ることのメリットを否定できないものの、しかし同時に存在する『政治的正しさ』がもたらす弊害について。

 ここ数年、僕たちイギリスの国民は、一部の政治家からこんな寛大な言葉を聞かされてきた。移民について懸念するのは、決して人種差別なんかではないですよ――。

 こんな「お許し」が出たのは、大きな変化だ。10年以上にわたり、多くのイギリス人が移民の大量流入に懸念をおぼえながらも、そんな心配を口にしようものなら非難されてきたのだから。僕の友人の1人も、大量の人々を外国から輸入するという事実上の「政策」をずばり批判したために、事あるごとに人種差別主義者だと非難されていた。

移民問題が「タブー」でなくなったわけ | コリン・ジョイス | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

例えばアメリカのオバマ大統領の登場から端を発する黒人地位をめぐる議論の復活も、少なからずこうした文脈の下にあるのだろうと思います。完全には消え去ったわけではないものの、しかし黒人大統領が登場したことで、PCの下に温存されてきた議論が噴出することになった。その是非はともかくとして、どちらにしても結果として議論が盛り上がりまくることになったと。
そして欧州でも、経済危機に端を発しての移民への不満の臨界点を迎えることで『政治的正しさ』の下に温存されてきた議論が噴出しつつある。貧すれば鈍するというか、むしろ貧することで政治的正しさを追求できるだけのリソースを失いつつある人たち。


そうしたPC=政治的正しさに基づく「差別主義者!」「排斥主義者!」という攻撃は、一般にリベラルな社会であればあるほど効果を発揮してきたわけであります。
そう、「お前は反ユダヤ主義だ!」と罵ればね。 - maukitiの日記
上記欧州における移民問題だけでなく、以前も少し書いたお話ではありますが特に解りやすい事例なのがイスラエルロビーに支配されるアメリカ議会というのはよく言われるお話でありまして。何故彼らが強力な勢力なのかというと、敵をそうやって「政治的正しさ」の下に黙らせてきたからなわけですよね。
「お前は反ユダヤ主義者なのか!?」なんて。
アメリカのイスラエル政策への批判は、その問答無用の攻撃の下に封殺されてきた。議論することさえ許されてこなかった。
政治的正しさってコワイ。


もちろん、正しく善意や義憤からそう攻撃する人だって居るでしょう。でも一方で、あるいはその影に隠れる形で(都合の悪い)相手の議論を封殺にその『PC』を用いる人々だって確実に存在するのです。
――そしてその攻撃=レッテル貼りは、この素晴らしきリベラルな社会においては、上記リンク先でも言及されているように、致命的な一撃となりかねないわけであります。
こんな状況で民主主義的に正しく住民利益に基づいた政策議論なんて出来るわけありませんよね。一部の人が言う「政治的公正さとは、民主主義の不倶戴天の敵である」というのはそれなりに一理あるお話なのでしょう。だってそれを言われると、反論をぶつけることすら出来なくなってしまうのだから。


翻って私たち日本では、上記アメリカやヨーロッパと違って、そうした移民議論を「率直に」進めることが出来るのは確かなのかもしれません。
――でもそれってやっぱり同時にPC意識が広まっていないことの証左でもあるんですけど。
果たしてそれが後進性の現れなのか、それとも進歩性の現れなのか、いやぁ判断に迷うところではありますよね。

移民は大きな問題だが、つい最近までは話すこともままならない事実上のタブーだった。移民政策を問題視すれば人種差別主義者と呼ばれた。現代のイギリスでこう呼ばれたら、社会的に抹殺され、政治キャリアもおしまいだ。

移民問題が「タブー」でなくなったわけ | コリン・ジョイス | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

本来なら熟議を通じて政策議論をするはずの民主主義政治における、大前提である議論すら封じてしまう『PC』の是非について。
みなさんはいかがお考えでしょうか?