香港はもう元には戻らない(前に進むとは言ってない)

アラブの春』で散々見た光景。


香港デモ:2週間 隔たり大きく 政府、民主派の要求拒否 - 毎日新聞
CNN.co.jp : 香港、デモ隊と占拠反対派数百人が衝突
ということで尚も続く香港さんちの騒動であります。ただ結局の所、これまであった民主化運動と同じく「多少の」民主主義が許されている社会だからこそ、こうしてデモが盛り上がるのは、いつみても皮肉なお話だよなぁと。それこそ徹底的に弾圧されている同じ中国のウイグルや、あるいは都市部以上に基本的権利がさっぱり無視される中国農村部のそれよりも恵まれているといっていい香港だからこそ。
――故にこれまでの民主化の歴史が示す通り、権力者(独裁者)が比較的優しい所であればあるほど、その運動機運は盛り上がるパターンそのもの。


香港はもう2度と元に戻らない 民主主義を求める切なる願い、政治的に不安定な時代が到来:JBpress(日本ビジネスプレス)
ともあれ、まぁこの辺は大盛り上がりした『アラブの春』とほとんど同じ風景ではありますよね。学生たちはがんばっているものの、ごく当然の流れとして、同じくあの時もあったように「現状維持」を求める素朴な住民意思――ついでに多分に政権側の動員でもある――としてコンフリクトする。。

ビジネスが政治に勝り、お金がイデオロギーに勝る香港はもう消えた

 だが、過去10日間の出来事は、永続に消えない心理的な痕跡を残すだろう。今となっては、香港が、いざとなったら北京の支配に服属する中国の都市であることを疑える人はまずいない。

 しかし、それと同じくらい、学生たちが投げかけた根本的な問題がどんな形にせよ決着したと考えられる人もいないだろう。香港の人々は、空虚な形の民主主義というものがどのような姿をしているか、それを見れば分かる。多くの人、特に若い世代はそれ以上のものを求める。

 これは今後何年にもわたって香港が政治的に不安定になることを意味している。我々が知っている香港、つまり、ビジネスが政治に勝り、お金がイデオロギーに勝る街は、もう過去のものとなったのだ。

香港はもう2度と元に戻らない 民主主義を求める切なる願い、政治的に不安定な時代が到来:JBpress(日本ビジネスプレス)

あの時も、アラブの人々は目覚め二度と戻らない、なんてこと言われていましたけどもやっぱり現状といえばご覧の有様なわけで。あの騒動でも心底理解したように、理想的な楽観論な人たちが信じるほど民主化への道のりは決して平坦ではないし、むしろ逆コースを辿ってしまうことだって決して少なくないのでした。一度は独裁者を追放してみても、結局、元の木阿弥とばかりに強権体制へ回帰したエジプトなんてその典型ですよね。
民主主義を目指して、三歩進んでは二歩下がろう、七回転んで八回起きよう - maukitiの日記
その意味では、今回の香港のそれも「目覚めた」「不可逆」とか言いながらも、やっぱり完全な権威主義でもなくかといって民主化運動を完全に諦めるわけでもないグレーゾーン=移行期で落ち着いてしまうオチになるのでしょうね。トーマス・キャロザース先生は問題は、政治発展の途中にあるこうした現状の香港のような移行期社会について、「それがどちらの方向に向かっているか」という点こそが問題だと仰っています。確かにそれは民主化運動の萌芽と言っていい。ならそれは、これから更に成長するのか? それともこれから消えていくのか?
かつてあった香港が消えつつあり、不安定になっていくのはおそらく確かでしょう。でもいつだって最大の問題は、その『変化』がどちらに向かっているのか、という点なんですよね。


みなさんはいかがお考えでしょうか?