米国史上初の黒人大統領が直面する未知との遭遇

黒人大統領の宿業がもたらすフラストレーションについて。


黒人少年を射殺した白人警官の言い分 | アメリカ | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
黒人青年射殺事件「不起訴」の衝撃 | 冷泉彰彦 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
ということで最終的な起訴判断で「不起訴」と出たことで、感情的な意味でも物理的な意味でも、二重の意味で燃えまくっているファーガソンの騒動であります。

 オバマ大統領は、今回ローカルな事件であるにもかかわらず、人種対立の激化を恐れて連邦司法省を動かし、ホルダー司法長官を現地に派遣すると共にFBIを投入し、政府として色々な努力をしたことは事実です。

 最終的に不起訴という決定を受けて、オバマは緊急会見をしています。自分の権威が低下していることをふまえて、「ブラウン氏の両親の思いを無駄にするな」というあくまで遺族の意向を前面に出しながらの声明には明らかに苦渋がにじんでいました。

黒人青年射殺事件「不起訴」の衝撃 | 冷泉彰彦 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

まぁこの辺はオバマさんの微妙な立ち位置がよく解る綱渡りのような声明ですよね。ぶっちゃければ「中身がない」スピーチということもできてしまうんですけど。
黒人大統領として黒人側に『配慮』することも簡単にできないし、かといって銃撃した側を一方的に批判することもできない。カリスマ性のなくなった普通のオバマさんだからこそ直面する難題。果たしてどれくらい大きな声で(利害当事者になりかねない)人種問題に介入すればいいのか?



限りなく利害関係がゼロで他人事感満載な個人として面白いと思うのは、やっぱりこれってオバマさん個人と言うだけでなく、同時に「黒人大統領である」オバマさんを支持する側(ついでに批判する側)の人たちも実は対応に困っているのだろうなぁと。
一連の事件において――実際には出来ることなんてあまり無いとはいえ――責任を追及し『黒人』大統領であるオバマさんの対応を批判することは、そのまま彼を人種差別問題に積極的でないと批判することに等しいし、かといってもちろん今回の警察の側を擁護するわけにもいかない。
実際これがいつも通りの白人大統領であれば確実に今のような構図はより大炎上していたでしょうし、そこからもしかしたら便宜が図られていた可能性もあるかもしれない。しかし黒人の大統領であるオバマさんがそれをするにはずっとハードルが高いし、それを要求することもむしろ彼への政治的攻撃に等しくなってしまう。
ようやく辿り着いたはずの黒人大統領にそんな「人種問題に不熱心」というレッテルを貼ることに躊躇うのも当然でしょう。かくして今回のような深刻な人種対立となりかねない問題に際していながら、しかし前にも後ろにも進むことができない『黒人』大統領の支持者たち。
故に彼らは普段よりも沈黙する。
まさにその曖昧さこそが、現地住民のフラストレーションを掻き立てる要因の一つではないかと。本来ならば味方であったはずの黒人権利擁護を訴える人々が、オバマ大統領の今だからこそ、実は大きな声を上げにくい構図。いやぁ見事に敵と味方が捻じれまくった構図で、オバマさんも大変だよねぇと他人事ながら思うしかありませんよね。
これがいつもの白人大統領だったら話は簡単だったのにね。
ところがそうではないオバマさんは『黒人大統領』として、カリスマ性で受け流せない程燃え上がった人種対立にどの程度の政治的指導力を発揮すればいいのか。元弁護士である彼にそれを教えてくれるような判例集なんてモノはなかった。
ザ・未知との遭遇


国史上初の黒人大統領である故に、当然の帰結として史上初めて直面する重大な人種問題について。もちろん従来から不支持の人は無邪気に無責任に批判していればいいでしょう。ここでジレンマに直面しているのは大統領自身だけでなく、従来からの(特に黒人権利擁護に熱心な)政権支持の人たちの方でもあるのではないかと思います。
果たして支持者はこの黒人大統領の対応を非難すればいいのか? それとも擁護すればいいのか?



みなさんはいかがお考えでしょうか?