「外敵」として恐れるアメリカ、「異邦人」として恐れるヨーロッパ

ヨーロッパの本気(のイスラモフォビア)を見るのです!



スウェーデン モスク襲撃相次ぐ NHKニュース
スウェーデンではイスラム移民に対して物理的に燃えているそうで。イスラム国の衝撃とやっぱり無縁ではないのでしょうね。

中東などから移民や難民を大勢受け入れてきたスウェーデンイスラム教のモスクを狙った襲撃事件が相次ぎ、警察は移民の排斥を訴える者による犯行の可能性があるとみて捜査を進めています。

スウェーデンの都市ウプサラで1日、モスクに火炎瓶のようなものが投げ込まれたうえ、建物の壁に「帰れ」と落書きされる被害が出ました。
けが人は出ませんでしたが、スウェーデンでは去年の年末から各地で、モスクに火が放たれたり、窓ガラスが割られたりする事件が相次いでいます。
スウェーデンは、内戦が続くシリアからの難民5万人以上を受け入れるなど、中東などからの移民や難民の受け入れに寛容な政策をとってきましたが、国民の一部の間で移民排斥を訴える声が高まっています。

スウェーデン モスク襲撃相次ぐ NHKニュース

うーん、まぁそれこそ昨今では『イスラモフォビア』の筆頭とされてきたのがテロ事件以後のアメリカだったわけですけども、でも歴史として見ればぶっちゃけヨーロッパ――西欧のイスラム嫌悪の方がずっと前から始まっていてタチが悪かったんですよね。それこそ植民地支配後の移民受け入れの時代から続く、現地社会と移民社会の軋轢は、2001年のテロ事件以後に生まれた「新参な」アメリカでのそれとは重みが違う。
なので今回の件が殊更に不思議かというと、やっぱそうではありませんよね。


つまり、アメリカでのイスラモフォビアとヨーロッパのそれって似ているようで実は微妙に内実が違うわけで。
大雑把に分類すると*1アメリカの場合は同時多発テロを起因として認識された「イスラム教徒は暴力的である」故に敵であるという政治的色彩が強い一方で、ヨーロッパでは戦後復興期の移民受け入れを起因とする「従来社会を侵食する異邦人」としての(宗教)文化的相違からくる嫌悪であります。
――どちらが根が深いかと言うと、まぁそれは後者の西欧の方だよなぁと。
有名なのがあのオランダのウィルダースさん*2であるし、それは反移民政党が台頭するフランスでもドイツでもイギリスでも、そして上記北欧でも構図は似たような所にあるのです。アメリカのような外からやってくる脅威なのではなく、内からやってくる脅威への恐怖。


こうしたそれぞれの恐怖感はあの『イスラム国』への対応の違いとしても出ているのでしょう。アメリカが安全保障上の新たな外敵として恐れる一方で、しかしヨーロッパの危機感はむしろホームグロウンテロなど社会における移民問題の延長線上として見た。両者はそれぞれに「イスラム国は止めなければならない」と言うけれども、しかし内実は微妙に違うんですよね。
少なくとも『9・11』以降アメリカにおけるイスラモフォビアを生む最大の原因となった国内テロ攻撃は減る一方で、しかしヨーロッパにおけるイスラム移民問題は中東騒乱を受けての難民受け入れを更に進めた北欧を中心にむしろより大きな問題となりつつある。


そう考えるとこれからイスラモフォビアがより大きな議論となるのはアメリカよりも、今回のスウェーデンのようにヨーロッパの方なのではないかと思います。
みなさんはいかがお考えでしょうか?