ギリシャは友達が少ない

故に救世主にも破壊者にもなれそうにない。



急進政党はユーロ圏の救世主になるか?:JBpress(日本ビジネスプレス)
ということで共通通貨の持つ本質的なジレンマ解消に、一か八かでギリシャの急進政党に期待するFTさんちであります。まぁなんというかイギリスからの他人事感はあるよねぇと。

もし何かが持続不能なのであれば、それは終わる――。少なくとも、諺に従うとそうなる。現行の政策に基づくと、ユーロ圏は持続不能だ。少なくとも現状の境界線のままでは無理だろう。筆者の見るところ、債務再編なくしてギリシャに逃げ道はない。そしてユーロ圏内で債務再編があるようには思えない。

急進政党はユーロ圏の救世主になるか?:JBpress(日本ビジネスプレス)

あるように思えない、ですって。まぁ債務放棄がほんとうにギリシャ復活に上手く繋がるのかどうかは経済学者の皆さんが色々とご意見ご感想あるのでしょうけども、ただ、どちらにしてもその選択肢を選ぶのは(少なくとも現状では)不可能である、というのはその通りですよね。


生きるべきか死ぬべきか
――自国経済を救うために、ユーロの規律は無視するべきか?


そもそも論を言えば、経済的利益と引き換えに主権国家裁量権の一部を放棄することが、ユーロ加盟のもう一つの意味なわけですよ。例えば、今回のように、個人だけでなくどこの国家だって持っているはずの「借金を返さない権利」を彼らは行使できない。私たち日本人も見慣れた「権利はあるが、行使できない」風景。だってそれは他の人(ユーロ加盟国の仲間)がゆるさないから。
ついでに言えば、不況時に必要な積極的な財政出動の権利も持っていない。厳密にはあることはあるんですけど、日頃から財政健全化に励んでいなければいざという時に行動する余地はずっと小さくなってしまう。
――ここまで劇的な経済的苦境に追いつめられながら、しかし尚もギリシャの扱いがユーロ加盟国からアレな扱いなのは、この『怠惰』という問題もあるからなんですよね。それは経済的右派な人たちが失業者に対して道徳的価値観を持ち出すのに少しに似ている。つまり、ギリシャが危機以前にきちんと財政健全化に励んでいなかったことが現在の苦境を招いた要因の一部であることは間違いなく、ただの怠惰どころかそれを粉飾すらしていたわけで。
実際、他のユーロ加盟国の中でも特に北欧を中心とした小国たちほど、夏の日のアリの如く日頃からユーロ的価値観に適った模範国として振る舞ってきたわけですよ。何故なら彼らはまさに小国である故に、巨大な権力を持つユーロ当局の意向に背くことができないから。一方で独仏伊西のように、大国である国は逆に発言力と影響力が大きい故にそうした日頃の努力=健全化を多少怠っても許されてきた。
ところがギリシャは別に大国でもないのに――ついでにいうとポルトガルも――キリギリスの如くそうした夏の間の貯蓄=経済改革を怠けてきたのです。そりゃ他の国から同情されるはずありませんよね。ユーロの大国から蔑視されるというだけでなく、むしろ同じ立場の小国からすら自業自得だと同情されなくなっている。


この点で、実は誰もがギリシャ危機は他人事ではないと内心では思いながらも、しかしさっぱり優しい援助の手が差し伸べられない要因の少なくない一部ではないかと思います。
そして、だからこそ、友人の少ないギリシャは仮に正論だとしてもユーロの救世主にも決定的な破壊者にも、たぶん、なれない。
だって友達がいないから。


その意味で言えば、やっぱりギリシャがどうこうした所で最早大した問題にならないのはその通りなのでしょう。ギリシャはユーロ内で孤立している故に、穏便な切断処理の準備が整いつつある。問題は、友達の多い、あるいは影響力のある大国が今日のギリシャのような状況に追いつめられた時こそが問題でしょう。共通通貨が持つ本質的なジレンマを抱えるのは絶対にギリシャだけではないのだから。
孤立したギリシャのように切断処理できないほどの病巣がいつか生まれてしまう可能性。その時こそユーロの本当の正念場がやってくるのでしょうね。でも今のギリシャはそうではなく、危機の前座にしかなりそうにない。


小国で友達も居ないギリシャ。喜べばいいのか悲しめばいいのか、故にその危機は矮小化される。
がんばれギリシャ