みんな仲良しユーロクラブという『看板』の終わりの始まり

表面化というルビコン川の先には何が待つのか。


ギリシャ議会選挙 与党が敗北宣言 NHKニュース
そういえば多くの人が戦々恐々と見つめていたギリシャ選挙が始まったそうで。速報では予想通りの結果である「急進左派の勝利」らしいですよ。

こうしたなか、サマラス首相は日本時間26日午前6時前に首都アテネ市内で記者会見し、「ギリシャ国民は意思を示した。私は結果を尊重し、次の政権に鍵を託す」と述べて、敗北を認めました。
5年前のユーロ危機の発端となったギリシャでは、サマラス政権が進める厳しい財政緊縮策への不満が高まるなか、急進左派連合は、EU=ヨーロッパ連合などに債務の削減を求めることや解雇された公務員の再雇用など緊縮策の見直しを公約に掲げて、支持を拡大してきました。
今回の選挙で急進左派連合の勝利が確実となったことで、今後、金融支援を巡るEUなどとの協議がどのように進むのか市場や各国が注目しています。

ギリシャ議会選挙 与党が敗北宣言 NHKニュース

まぁやっぱり驚きかと言えばそんなことなく、事前の世論調査想定の範囲内ではありますよね。その予測が「ユーロ圏初の『正真正銘』の急進派政党の誕生」というまったく当たって欲しくなかった悲観的予測ではあるんですけど。


ともあれ、先日の日記でも書きましたけど、問題はギリシャそのものじゃないわけですよね。というかギリシャ自体は概ねどうでもいいとすら言っていい。ただ、しかし、ここでユーロにおける(ドイツを筆頭とする)主流派に「あからさまに」反抗する新政権が生まれるという意味は決して軽くはない。これまで少なくとも表向きにおいては一致団結な仲良しクラブでやってきた彼らがついにその建前を放棄せざるを得なくなるとき。まぁそもそも論を言えば、潜在的にあった不満を覆い隠してきたこれまでが異常だったのであって、正常化と言うこともできるでしょうけど。
基本的に彼ら共通して訴えるのは、ユーロが上から目線で押し付ける緊縮政策の破棄であります。そして多くのケインズ側に立つ経済学者が支持するように――もちろん反対する人も居る――その選択は基本的には間違っていない。
ここで難しいのは、そんな反抗的な急進派政権の彼らに対して拒絶するのも妥協するのも簡単ではないという点であります。もしここで彼らに妥協をすれば、次々と――次の直近で言えばポルトガルとスペインの選挙――その後を追う者が出る可能性は高い。ギリシャが交渉に「ああして」成功したのだから我々も同じ戦略を採ろう、なんて。それは脅迫一歩手前の政治的混乱を利用しての政策実現と言う意味で、非常に危険な連鎖であるのは間違いないでしょう。
欧州連合という一大政治プロジェクトが抱え続ける『原罪』 - maukitiの日記
かといってここで国民の手で正しく民主的選挙によって生まれたギリシャ新政権を無下に扱えば更なる怒りを招くことも間違いない。実際問題として前政権が倒れた経緯もその同じ過程で、それこそ「緊縮疲れによる不満の爆発」なんてもう危機の初期から言われていたお話なわけで。マクロな民主主義とミクロな民主主義の衝突であり、欧州連合における民主主義の赤字について。そうした流れの中で、今回は前回よりもまた更に本気な反抗者が生まれたというだけ。


ついにユーロクラブは、ずっとあった内部対立を覆い隠しておけなくなってしまった。
ユーロ圏幻想期の終わり。


果たして今回初めて生まれた正真正銘の急進的な反抗的政権となったギリシャ新政権は、ユーロという世界的実験にどんな「前例」を創ることになるのでしょうね? ギリシャ国民の不満の果てにあるものとは。
みなさんはいかがお考えでしょうか?