結果というよりルールの問題

故に重要であると。


教育と階級:米国の新たな貴族:JBpress(日本ビジネスプレス)
絶望し過激主義に走らせない為にも教育が必要だというのはまぁぐぅ正論ではありますよね。

 ここで誰が指名を勝ち取るにせよ、2016年の大統領選では、元大統領の妻と対決する公算がある。

 特権的地位の相続に反対する理念を建国の基礎とする国が、これほど世襲に寛容なのは奇妙なことだ。米国には、王や領主を頂いた経験がない。そのせいか、エリート層が固定されつつある兆候があっても、さほど気にしていないように見えることがある。

教育と階級:米国の新たな貴族:JBpress(日本ビジネスプレス)

ただこれはちょっと賛成できないアメリカ観ではあるかなぁと。むしろ彼らが伝統的に憎んでいるのは「政治権力を金で買う」ことの方なわけで。だから金持ちそのものを憎んでいるのでは決してないし、むしろアメリカ社会における金持ちって「いつか自分もそうなりたい」と考える――といってもまぁそこまで上昇志向の強くない大多数の一般市民にとっては私たちが独り言ちるところの「あー宝くじ当たらねーかなー」レベルではありますけど――存在であるわけで。金持ちが金持ちらしく振る舞うことは何も問題ではないし、むしろそんなセレブの存在こそがアメリカンドリームな価値観を煽り助長してきた。彼らにとって階級はどうあがいても越えられない壁ではなかったからこそ。
この辺は歴史的に硬直性故に階級闘争の激しかった欧州文化とはまた違った独特のアメリカ文化なのと思います。アメリカと欧州の社会文化の差異。
ていうかそうした「目立つ金持ちは汚物なので消毒すべきである」な傾向があるのはむしろ「相続が三代続くと財産はなくなる」な相続税を備える日本社会の方が強い気がします。


ともあれ、だからその点で言えば、それこそ本邦の政治家批判への一部にもあるような世襲政治家に云々とうよりも、むしろアメリカで憎まれるのは政治家そのものというより(民主的選挙で選ばれた)政治家を金で操ろうとする『悪い』金持ちであるし、金持ちしか勝てないようなルール=選挙制度や教育や就職事情のほうがずっと彼らにとって憎悪の対象であるわけですよ。
まぁその意味でこの評論の本旨自体には同意するところではあるんですよね。経済格差が教育格差であってはならないと。
オバマが「無料化」を提案したコミュニティ・カレッジとは? | 冷泉彰彦 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
冷泉先生なんかも最近ネタに取り上げていましたけども、現代アメリカにおける教育問題は経済格差問題と絡んで上記のルールそのものへの疑義に繋がりつつあるわけで。教育を受けた者が金持ちになるのはまったく問題はないものの、そもそも教育を金持ちしか受けられないのであればそれは言語道断である、と。
まぁこの辺は世界最優秀の大学を持つアメリカの光と影で、同情すべき点も少しあるのかもしれません。名門大学は当たり前ですけど募集定員は限られていて、ところがそこにはアメリカ国内ではなく世界中から優秀な留学生が集まる。その激しい競争に勝つ為には当然試験支援を受けやすい金持ちが有利で、そこに更に世界中から優秀な頭脳が集まる大学はそれ以外との教育格差を広げていく。

国民が「この国のやり方はいかさまかもしれない」という疑いを抱けば、右派にせよ左派にせよ、扇動的な政治家に投票したい誘惑に駆られるかもしれない。これらの勢力に対する既存政党の選択肢が、もう1人のクリントンや、はたまたブッシュだったら、なおのことだ。

教育と階級:米国の新たな貴族:JBpress(日本ビジネスプレス)

ということで、やっぱりこの辺の仰りようはとても正論だと思います。そしてアメリカでそうした空気が大きくなりつつあることも間違いない。
――でもまぁぶっちゃけイギリスのエコノミストさんちのお前がそれを言うのか感はあって、アメリカの格差よりも「この国のやり方はいかさまかもしれない」という疑義をより切実な形で抱かれているのが西欧の現状である「社会から無視されている」移民たちだとも思うのでそんな他人事風に言っている場合かなぁとはちょっと愉快な気持ちにはなります。
もちろん私たち日本も他人事ではないのであしからずということで。


経済格差問題から生まれる教育格差問題について。
みなさんはいかがお考えでしょうか?