愚かなのは有権者の罪、それを利用してしまうのはトランプの罪

選挙に勝つ為の「超えてはいけないライン」策定中。


エルサレム首都宣言とイラン核合意破棄の類似性 | 鈴木一人 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
うーん、まぁ、そうねぇ。

結果として、現実には何も起こらないが、トランプ大統領は支持者を喜ばせる代わりに、世界からの不信感を買い、中東和平を進めるためのコストをより高くしたということになるのであろう。そうすることにどこまで意味があるのかはわからないが、あくまでも「アメリカ・ファースト」「支持者ファースト」で考えるトランプ大統領にとっては、世界がどうなろうと次の中間選挙で有利になればそれで満足なのであろう。

エルサレム首都宣言とイラン核合意破棄の類似性 | 鈴木一人 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

以前も書いたお話ではありますが*1、「外交政策は、国内政治を外部に反映させたものである」というのは昔から言われるお話でもあるわけで。今回も、そんなトランプさんの国内政治劇の延長がこうして外交として出ている、というのはやっぱりヨーロッパや日中韓など東アジアでも見られるいつもの光景ではあります。ただアメリカは巨体故に、その影響が世界的に大きいだけ。
民主主義国家の限界というと身も蓋もありませんけど、意図せぬ政権交代が起きる時点で、外交政策がある日急に変わってしまうことは避けられない。本邦でも少し前に経験したお話でもある、あの某「サンカクケイ」発言では、あちらの当局の中の人たちも同じくらい驚いたんじゃないかな。

それこそ「トランプがバカ」だからこうなったと断じることができれば話は簡単だったのにね。彼が居なくなれば話は終わるのだから。しかし悲しいかなそうではない。就任以前から公約として存在してきたように、彼の背後にはその離脱を支持する多数――必ずしも国全体で見て多数派とはいえないものの――の有権者が実際にいる。合衆国憲法の上位に位置するような条約規制に反対する人たちや、あるいは石油石炭など排出に直接かかわる産業に居る人たちが。

いつもの「ならば今すぐ叡智を授けてみせろ」案件 - maukitiの日記

彼の背後にはこうした決定を支持する有権者たちがまちがいなく存在している。TPP脱退も、パリ協定離脱も、ニューヨーク宣言離脱も、イラン核合意破棄も、そして首都宣言も、トランプさんの背後にはそれを望んだ人たちが居てこそ、こんな有様になってしまった。
もちろんバカな(あるいは在米ユダヤな)有権者たちの声を聴く方がバカなのだ、と批判することはできますけども、だったらそもそも『選挙』って何のためにやっているのか、という民主主義政治についての根源的なお話になってしまう。衆愚どもではなくエリートたる政治指導部こそが正しい道を知っていて、それをただただ是認していればいいのだ。というならば選挙などやらずに初めから中国さんちのようにやっていけばいいわけで。



ということで、別に「イラン核合意破棄」を持ち出すまでもなく、お馴染みになったトランプさんのいつものパターンっぽいので、今回の「首都宣言」もそこまで盛り上がりに欠けるかなぁというのは個人的感想としてあったりします。そもそもそれ以前からアメリカは中東で徹頭徹尾嫌われてきたし、じゃあ、もし、これまでの通例通りに宣言しなかったらアメリカへの好感度が上がり、中東和平に弾みがついたのかというと、それもまずありそうにないよね。
やってもやらなくてもどうせ初めから嫌われているのならば、いっそやった方がワンチャンあるかもしれない、というのは――賛成するかどうかはともかくとして――その乱暴な判断はある意味合理的ではあります。


民主主義政治における政治家なんて、選挙で勝てなければただの人だしね。
――だったらそのために何をしていいのか、と言われるとやっぱり答えはNOでもある。ではその中間にあるだろう曖昧な『ライン』って一体どこにあるの? 誰が決めるの? 有権者? マスコミ? 慣例? まぁ基本こういうラインって悪用されないように明確にしないのが一般的ではあるんですけど。
でもまぁ今世界中で起きているように、『新秩序』ができる時ってこんなものかもしれない。


トランプさんが越えたと批判されるラインは、新たな基準値となるのか。それとも踏み超えた者として断罪されてしまうのか。
みなさんはいかがお考えでしょうか?