日常系で育った彼らが望む永遠

このネタを書くと「ヴァーツラフ・ハヴェルの慧眼ってやっぱスゲーな!」というオチにしかならないんですけど。



反安倍陣営が読み違える、若年層の「功利主義的メンタリティー」 | DOL特別レポート | ダイヤモンド・オンライン
うーん、まぁ、そうね。若者の自民支持を『功利主義』という言い方はちょっと微妙ですけども、論旨は概ね同意できるし、また現状を上手く説明できているお話かなあと。

 若年層の自民党支持の主な要因は恐らく、現政権が世界の変化に無難に対処し、特に経済の面での相対的な安定を保っているように見えることだろう。

 憲法や民主主義の大原則(理想)から多少、逸脱しても、政治は自分たちの生活や利益につながり、効率的に問題を処理してくれればいい、という功利主義的なメンタリティーだ。

 一方で「反安倍陣営」はそこを読み誤っているのではないか。

反安倍陣営が読み違える、若年層の「功利主義的メンタリティー」 | DOL特別レポート | ダイヤモンド・オンライン

個人的に若者の安定志向を示す要因について、鶏が先か卵が先かはともかくとして、所謂『日常系*1』なアニメを見て育った若者たちだから、という試論も言えたりするかなあと。(フィクションにすら)そうした平穏で個人的な日常を求める人たち。僕も元熱狂的ひだまらーなのでその気持ちよくわかります。でも今ひだまりスケッチの話をすると涙腺ヤバいのでかんべんな。
セカイがヤバいとか大きなお話ではなく、小さくても安心できる『日常』こそに価値がある。



ヴァーツラフ・ハヴェル - Wikipedia
ちなみに、非日常ではなく圧倒的大多数の人びとにとって「普通の生活」こそが重要であり、革命なんてものは求めてはいないのだ、と看破したのがビロード革命の立役者の一人であったヴァーツラフ・ハヴェルだったんですよね。人びとは、「永続革命」を唱える共産主義や模範的社会主義者などという終わりの見えない努力から解放されるべきなのだ。
当日記でもしばしばネタにする「It's the economy, stupid」もこの系譜である。父ブッシュが成し遂げた冷戦勝利なんて大きな話よりも、やっぱり私たちにはクリントン陣営が訴えたように、小さいテーマながらも個人的生活の充実の方がずっと大事なのだから。





今でも国会前で元気にデモをしている人たちは少なくありませんけども、その行為の是非はともかくとして、しかしハヴェル風に言うならばそれはやっぱり理想のための疲れる非日常であるのは間違いないんですよ。もちろん偶にやるなら、ハヴェルが生きた時代のようにほんとうに自由が抑圧されているなら、それもいい。あの熱狂的セイケンコウタイをふたたび。
しかし長期的には「普通の暮らし」さえあればいいと願っている人たちが大多数であるはずだし、今の安倍政権の強権っぷりは、例えばお隣の中国なんかとは較べるまでもないし、テロ・移民難民対策に追われる他の欧米先進国と比較してすら、今の日本政府・社会が突出して個人的生活の自由を許さない国家であるとはどう考えても言えないわけで。
だから若者たちの価値観って国会前デモなんかに冷淡な彼らの反応を見ると反政権運動への賛否、あるいは野党の対案の不在というよりは、むしろ(自身の嗜好や趣味ですらない)非日常の行為にリソースを割くこと・それを求められることへの拒否感なんだと思います。それを功利主義というのはまぁ諸説あるとしても、しかし一面の真実とは言えるかもしれない。
自分の個人的生活が安泰であればいい。
――正しく個人主義を実践する若者たち。
逆説的にもし安倍政権が個人的生活への侵犯を更に、あからさまに進めるなら若者の支持を失うだろうとは思っています。東京オリンピックのボランティア募集(強制しないとは言ってない)とかその兆しちょっとあるよね。
しかし、少なくとも現状においては、安倍政権がそこそこ上手く取り繕っている一方で、例えば反安倍の態度表明やデモ参加を大きな声で訴える野党的行動の方がずっと自身の日常が侵されていると「感じて」いるんじゃないかと。




おそらく彼らが望む平穏無事な『日常』を飽きるほどに手に入れた時、その次の世代では再び非日常な政権交代運動こそが「イケてる!」という時代が来ることでしょう。そうなれば再び非日常への憧れ、熱狂的な祭りを望む声が大きくなるかもしれない。
しかし、悲しいかな、あるいは幸運にも、今はそうではない。ただの『日常』こそに価値が見出される時代である。



日常系アニメと共に生きる若者たち。ハヴェルが共産主義統治の失敗を見抜いた慧眼である、ポスト政権交代の熱狂時代に生きる若者たち。
「祝祭が終わり、日常が始まるのです」
若者の安定志向ってつまりそういうことなんだと僕は思っています。僕も疲れた時にはゆるキャンリピートしてるしね。一番好きなのはやっぱりリンちゃんのママかな!(冒頭ひだまりネタの伏線回収)


日常を生きようとする若者たち。
みなさんはいかがお考えでしょうか?