自由貿易やめますか? 再配分しますか?(二年ぶり二回目)

ちょうど二年前の前回2016年の日記自由貿易やめますか? 再配分しますか? - maukitiの日記書いた時から状況は更に加速していて、まぁ面白いというか日記を書いていてよかった感。


左派賢人の過激な問い。"世界のトランプ化"はリベラルのせい?(週プレNEWS) - Yahoo!ニュース
ということでアメリカの劇的な政権交代から、一部専門家の慧眼によらずとも、徐々に一般の私たちにすら解る形で可視化が進む反グローバルな現代世界であります。2年前は不安半分期待半分でトランプさんにキャッキャッしていたのに、まさかここまで進むとは予想外。

それを破壊したのは、言うまでもなくグローバリズムであり規制緩和だが、今、リベラル陣営はグローバル経済の構造自体の欠陥に関する議論よりも、倫理やモラル、多様性、ゲイライツ、人種差別といった"小さな問題"にばかり注目するようになっている。

本筋から逃亡し、"正しい側"の席に座り、"正しいこと"を叫ぶだけでは何も変わらない。左派が本質的な原因に目を向けることなく、本来すべき役割を果たさないからこのような社会になっているのだ〉

ジジェクは、リベラル陣営がトランプら右派政治家の言動ばかりに目を奪われるのは「バカげている」と喝破(かっぱ)します。極右の再興はあくまでもグローバリズムの暴走、格差の拡大による"二次的な症状"である。

にもかかわらず、右派陣営に煽(あお)られるがままに、反差別や多様性といった"些末(さまつ)なこと"を追いかけても、この社会はよくならない。いや、むしろ右派ポピュリズムは拡大していくだけだ――。

身もふたもない言い方をすれば、ジジェクは「左派はきちんとゼニの話をしろ」と言っているのです。

左派賢人の過激な問い。"世界のトランプ化"はリベラルのせい?(週プレNEWS) - Yahoo!ニュース

それに対して、世界中のリベラルたち――この点を見ても日本のリベラル「だけ」がだらしないと責めるのはフェアではないよね――が適切に解答できておらず、故に希望を失った人たちが極右に走るのが止まらないという構図が生まれている、と。
現代国家が持つ避けられない宿命である経済成長・GDP増大に大きく寄与している以上、政府は今更自由貿易グローバル化を止めるわけにはいかない。ではその歯止めは誰がかけるの?
グローバル化の必然として広がる経済格差と、失われていく国内雇用(賃金低下)とのダブルパンチ。卵が先か鶏が先か。
まぁ概ね同意できる現状説明ですよね。端から見ればちょっと軌道修正(グローバリズム行き過ぎはよくないよね)をすればよさそうなモノですけども、しかしその微妙な軌道修正が、一気に反グローバルでローカルな自国一国主義に振れかねと恐れる気持ちもちょっとわかります。まさにトランプさんの政策もその少し変わった一例でしょう。自由貿易が生む不利益を変えられないなら、それ自体に不服を申し立てるしかない。



経済学者トマ・ピケティのグループが「より公平なヨーロッパ」を目指して予算100兆円規模の税制マニフェストを提案 - GIGAZINE
ともあれ、上記ジジェクさんもそうですけども、個人的にはこのネタで一番まともなことを言い続けていると思うのがピケティ大先生かなあ。現地フランスですら『極左』扱いされるらしい彼ですけども、『21世紀の資本』なんかもつまるところ「(若者への)再配分をしろ!」という主張が根幹ですよね。まぁそれ故なのか日本のメディアでもあっさり忘れ去られてしまいましたけど。

こうした本質的欠陥を避けるためにこそ、自由貿易には並列して政府による再配分政策が重要なんですが、尚も自由貿易の恩恵に預かる労働者として「強い」人たちや、あるいは物価安という恩恵を受けつつも労働価値の逓減を無視できる年金生活者なんかのリタイアした老人たちの政治的な声が大きいとその声は相変わらず無視され続けることになる。

自由貿易が産む社会分断。

自由貿易やめますか? 再配分しますか? - maukitiの日記

2年前の以前の日記でも書いたお話ですが、グローバリズム規制緩和はデメリットだけでなくそれ以上に大きなメリットが確かにあるんですよ。しかしそれには決して小さくないデメリットが同時に存在している、というだけ。そしてそのデメリットは概ね中間層以下の経済的弱者が被る、というだけ。そこで本来「弱者のミカタ」として政治的に台頭するはずだった賢いリベラルたちは、ネトウヨになりかねない低学歴な国内の経済弱者・労働者たちではなく、もっとマイノリティな属性で差別される人たち(彼らは善良であるという大前提に疑問の余地などない)を救う方がジレンマなく気持ちよくなれることに気づいてしまった、というだけ。


かくして再配分政策は先進国のほとんどどこでも放置されることになった。
(穏健的な形での)帰還不能点を越えてしまった以上、残るのは過激な手段に依るしかない――というのはアメリカでもヨーロッパでも見られる現代世界なんだろうなあと個人的には思ってます。日本にはいつやってくるだろうね?


グローバリズム自由貿易の未来について。
みなさんはいかがお考えでしょうか?