21世紀版『退治すべき怪物』

現代中国のヤマアラシのジレンマはどこへゆくのか。


CNN.co.jp : 米政府、在ヒューストン中国総領事館に閉鎖命令 中国側が反発
米国が在ヒューストン中国総領事館閉鎖を命令-中国は報復表明 - Bloomberg
ということで昨今の情勢変化を受けて、領事館閉鎖命令で燃え上がっていた(ダブルミーニング)中国さんであります。
領事館での資料焼却なんてフィクションなんかではよく見る展開ではあるもののの、まさか現実でもリアルタイムに見られるとは。

  中国は、米国が外交当局者らに嫌がらせをしたほか中国人学生を脅迫し、個人所有の電子機器を没収したり理由なく拘束したりしたとも主張。中国の在外公館や職員が爆発物設置や殺害の脅迫を最近受けたとも説明した。

  声明で「侵入や干渉は中国の外交政策の遺伝子と伝統には無縁のものだ」とコメントした。特定の事項には言及しなかった。

  汪報道官は、「中米関係を損なうこのような理不尽で正当性のない行為を中国は強く非難する」とし、「米国が直ちに誤った決定を撤回することを強く求める。さもなければ、中国は合法的かつ必要な措置を取る」と表明した。

米国が在ヒューストン中国総領事館閉鎖を命令-中国は報復表明 - Bloomberg

まぁなんというか、その燃やす行為はどうこうというよりは、アメリカも中国がお互いに「そういう行為が必要な相手」として相手を見ているのが端的に示唆されているのが面白いお話だとは思うんですよね。


経済関係をより強めれば強めるほど、しかし彼らの内部に抱える問題に言及する機会は増えていく。
いやあ、有名な『ヤマアラシのジレンマ』によく似た光景でちょっと面白いよね。
(自分にとって都合の良い)経済関係は維持したいけれども、(自分たちにとっては都合の悪い)人権問題や外交問題には触れないでいて欲しい。
自己の独立と、他者との協調というトレードオフ
まるでミクロな人間関係に悩む私たちのような、中国さんのせつなく切実な想い。


あるいは前回の冒頭でもネタにした、ロバート・フロスト風に言えば「しっかりとした塀を作れば、隣人と仲良く暮らせる」と解っていても、
しかし経済成長の為にはアメリカと付き合わざるを得ない現代中国。
まぁそれこそ戦前戦中の日本も経験した、欧米世界と対抗せんとする新興国にとってはよくあるジレンマと言ってしまっては身も蓋もありませんけど。
我々はそれはまぁ斜め上のバカな方向に突進していってしまったわけですけども、はたして「賢い」中国はどこへ向かうんでしょうねえ。


これまでのアメリカと言えば、そうした経済関係の維持を暗黙の人質にする関係性こそが、いつか中国も自由で民主的な社会になるだろうというこれまでの楽観にも繋がっていたわけで。
ところがそうした楽観の時代は、ついに、とうとう、案の定、終わりつつある。


かつてジョン・クインジー・アダムズが(そうすべきではないと否定的に)述べた「退治すべき怪物」扱いされつつある現代中国と、そのジレンマについて。
世界が平和でありますように。