ぼくの街にもクリミア的「危険なゲーム」が遊びにやってくる

先日の日記『平和の配当』の有効期限切れ - maukitiの日記の続きというか本題。『平和の配当』を求めていたはずが、東アジア情勢はご覧の有様だょ。


米中軍事衝突、台湾の離島から始まるリスク-中国の「危険なゲーム」 - Bloomberg
うーん、まぁ、そうねえ。

  主に中国のマクロ経済・政治予測を行う独立系のエノド・エコノミクスは今年3月、米中軍事衝突の確率を65%に引き上げた。2019年1月は10%だった。「台湾への奇襲攻撃は可能だが、より特徴的な中国のアプローチは台湾の抵抗意志を損ね、自国の行動を遡及的に正当化することを見据えた威嚇の強化だ」とチーフエコノミスト、ダイアナ・チョイレバ氏は分析。「中国は現在、圧力を高める『グレーゾーン』作戦を通じた中台統一を実現しよう図っており、今後数年以内に人民解放軍台湾海峡で米国に勝てるようになると信じている」と語った。

米中軍事衝突、台湾の離島から始まるリスク-中国の「危険なゲーム」 - Bloomberg

寡聞にしてこのシンクタンクの能力は解りませんが、しかしそれをブルームバーグが報道している、という自体がある種のメッセージだよねえ。
少なくともそこには経済的・金融的リスクがあることを示唆していると。


個人的にこのニュースですごく面白いと思ったのは次の部分で、

「台湾への奇襲攻撃は可能だが、より特徴的な中国のアプローチは台湾の抵抗意志を損ね、自国の行動を遡及的に正当化することを見据えた威嚇の強化だ」

未だにそれが起きていない理由が奇襲攻撃の能力の問題というよりは、行動を正当化する『大義名分』を待っている構図である。
――それが揃えば自国の行動を遡及的に正当化することができる。
その意味で言えば、上記ニュースでも言及されているように、武器売却や台湾の国扱いなど「中国政府に無闇に対抗し刺激すべきではない」という意見には一理あるんですよね。
だってそれらは紛れもなく、実際に国際社会として通用するかはともかくとして、中国の行動の正当化に用いられることは間違いないんだから。


ということで、ここで私たちは国際関係史において私たち人類が延々と繰り返してきたいつもの古典的ゲームに立ち戻ることになる。
『融和』か『対抗』か。
後者を選べばもちろんそうした大義名分に逆用される可能性もあるものの、しかし、だからといって、何も行動しないことは、それはそれで中国の台湾に対する政治的・軍事的圧迫の「事実上の黙認」だと受け取られることになりかねない。
カナダなど40カ国超、中国に国連高等弁務官の新疆入り容認求める | ロイター
ここで更に問題を複雑にしているのは、前回日記ウイグルでの虐殺はヘイトスピーチに入りますか? - maukitiの日記でも書いたように、私たちが絶対的価値観としている『人権問題』がそこに入るとまぁ妥協的立場を採ることがより難しくなってしまう点でしょう。
――人権問題を見逃す代わりに中国との緊張緩和を図るとかリベラルの自殺でしかない。
いやまぁリアリズムな人たちからすればやっぱり諸手を挙げて賛成するでしょうけど。


中国に勘違いさせない程度には対抗する必要があるものの、その対抗措置が一線を越えない程度には抑制的でなければならない。
そんな繊細な舵取りが出来る政治家――そして更に言うならそうした外交政策を容認する国民――をまず屏風から出すところから始めないといけないね。
この古典的ゲームがそもそも難しく――故に私たちが延々と繰り返してきたのは、結局はどう振る舞おうが相手である中国側がどう受け取るのか解らない、という根本的問題があるわけで。古くはナチスドイツの読み間違いや、あるいは最近でもアメリカとイラク戦争だって、その融和と対抗のメッセージの読み間違いが結果として戦争にまで至ってしまったわけだし*1
ミクロな私たちが日常生活でも痛感しているように「他者の内心」を正確に読み取るのは不可能に近いんですよ。
いわんやまったく文化の違う外国をや。
だからこそ、私たちはお互いにそのメッセージを勘違いしないように、常日頃から定期的に直接対話することで認識のギャップを埋めておく必要がある。
中国、米との軍事対話拒否か 国防長官要請に応じず―英紙:時事ドットコム
あっ……(察し)。






ウクライナ=クリミアの時は、所詮は遠く離れた海外のことだからと事実上ほとんど何の反応もしなかった日本の私たちではありますが、

 シドニーマッコーリー大学で安全保障問題・犯罪学部門を率い台湾の防衛政策を研究しているベン・シュリア教授は「中国が離島の1つを占領しようとしているという深刻な可能性がある」と述べ、「それが起きれば国際社会は何をするだろうか。米国はどうするだろうか」と問い掛けた。

米中軍事衝突、台湾の離島から始まるリスク-中国の「危険なゲーム」 - Bloomberg

はたして台湾の離島でそれが起きた時、私たちの日本社会は一体どういう反応をするんでしょうねえ。

  • 右も左も合わせて喧々諤々な議論が起きたりするのか。
  • あるいは、何事もなかったようにこれまで通りの日常を送ることになるのか。

いやあどちらに転んでも「ここがヘンだよ日本人!」的不毛な議論が巻き起こりそうで今からwktkしてしまいます。


「それが起きれば国際社会は何をするだろうか。米国はどうするだろうか。日本はどうするだろうか」
みなさんはいかがお考えでしょうか?