日本人よ、これが『民主主義の赤字』だ

ついにギリシャ危機でも見られたEU懐疑派なヨーロッパ諸国民の気持ちが解るようになってしまったね。これがオトナになるということなのかしら。




ネット炎上のIOCバッハ会長「チャイニーズ」“言い間違い問題”が海外にまで波紋…「オリンピック級の失言」「消極的なホスト国を味方につけようとして恥を」(Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE)
上機嫌一転「検査体制機能している」バッハ会長“違反”指摘に顔色こわばる - 東京オリンピック2020 : 日刊スポーツ
バッハ氏、「日本」を「中国」と言い間違い 「反発招いた」米紙報道 | 毎日新聞
ということで、いよいよ来日したことでこれまで以上に詳細にその一挙一動が報道されるようになったIOCのバッハ会長ではありますが、これまでも漏れ聞こえていた失言の類も当然増えてくるわけで。
BBCやPew Research Centerの好感度調査を追っている人たちならご存知でしょうけども、長年、世界でも一番中国に対する好感度が低い点を付け続けている我らが日本社会に「チャイニーズピーポー」というのは、まぁ素晴らしく煽り性能が高くてワザとやってるのかな? と思うレベルではありますよね。
もちろん偶然ではあるんでしょうし、日本私たちが英仏独の違いにそこまで関心が無いように、あちらだって日中韓の違いにそこまで関心があるかというとおそらくないしねえ。
そうした(法的な意味での)善意の言い間違いというヤツなので、あんまりマジレスするのもフェアではないよね。
バッハさんはただただ我々に興味が無いだけなのだ。いやまあそれはそれでどうなんだという批判はやっぱりあるんですけど。
しかし、この問題の本質は、開催地の市民感情に興味が無くても許される、ということでもあるわけで……。



蓮舫氏、バッハ会長の五輪開催「恐れる必要ない」に「貴方に言われたくありません」 : スポーツ報知
個人的には普段は「為にする批判」そのまんまで野党のお仕事って気楽な稼業大変なんだなあと生暖かく見守っている蓮舫さんではあるんですが、今回の批判は割と、深いことを言っているように見えて感心したんですよね。
つまり、WHOのテドロスさん失言や国内政策批判の時にもあったような、部外者であり実際に責任を取らない政治家たちによる自分勝手な(ように見える)私たち市民の素朴な反発という意味で。

 この報道を受け蓮舫氏は「パンデミックが発生した場合、責任を取る立場にない貴方に言われたくありません」とし「空港や選手村を視察した仲間からはバブルはザルとの報告です。『恐れる必要がない』日本と中国を間違えたり、もはや会長の言葉が虚しいのです」とツイートしていた。

蓮舫氏、バッハ会長の五輪開催「恐れる必要ない」に「貴方に言われたくありません」 : スポーツ報知

つまり、『民主主義の赤字』である。
蓮舫さんからも指摘されているように、例えオリンピックでパンデミックが起きようともまぁバッハさんは我々に対して何ら責任があるわけじゃないんですよね。それはコロナの初期対応でどれだけ杜撰なことをしようが、ミクロな私たちからは何ら責任を追及できないWHOのテドロスさんと同様に。



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当日記でもかなり好きなテーマなので何度か書いてきた日記ネタではありますけども、私たちが彼の身勝手な発言や行動に抱く「直観的な無力さ」という点で今回の蓮舫さんの批判はうまく的を射た発言じゃないかと。
リベラルな社会に生きる私たちだからこそ、逆説的に現代の国際機関が抱える『民主主義の赤字』について、無視することができない。

実際、この構図って国際関係において現代でも主権国家こそが主要プレイヤーであり続けていることの理由そのものでもあります。
上手くいっているときには国際機関の言うことを黙って聞いていればいいんですよ。
でも人間がやる以上何もかも全てが上手くいくわけでは絶対にないし、今回も見られるように「意見が分かれる」ことだって多々あるわけでしょう。
――その時、国際機関は一体どれだけ私たち個人のことを考えてくれるの? という国際関係における究極の問題の一つがここにある。
つまるところ、国際機関というのは私たち自身が選んだ政府と違って、究極的にはミクロな私たちには何の責任も負っていない、という身も蓋もない事実があるんですよね。そしてこの問題は今も未解決である。
国際機関や条約というのは契約によって我々の主権を侵害し、ミクロな我々を食い物にしている(こともある)のだ! 
うーん、トランプ前大統領かな???

無能や邪悪な国際機関のトップがくると思い出す、彼の顔 - maukitiの日記

故にリベラルな民主主義支持者であればこそ、国際機関や国際条約との一方的な主権侵害に反発することになる。
いやあまさか蓮舫さんがトランプと同じようなことを言うことになるなんて感動しちゃうよねえ。
パンデミックが発生した場合、責任を取る立場にない貴方に言われたくありません」
やっぱりそれってトランプ旋風で起きた「国際機関や条約に自分たちの国のことについて好き勝手言われたくない」というアメリカンファーストな運動とほとんどそのまままでもあるんですけど。
トランプこそがリベラルな民主主義の救世主だったんだなあ。


契約に縛られその制限された決定権で右往左往する菅政権に関しては、今度の選挙で幾らでもお灸をすえたりあるいは支持を表明すればいいんですよ。
しかし、その本丸である国際オリンピック委員会に対しては、ミクロな私たちはどこまでいっても無力である。
バッハさんがどれだけバカなことを言おうとも、その判断の影響を多かれ少なかれ受けるだろう私たちは彼を罷免させることなど絶対に出来ないし、故に究極的には彼は私たちの反発をそもそも気にする必要などない。
IOCバッハ会長滞在ホテル前でデモ 広島訪問パフォーマンスが日本人の怒りに火をつける(日刊ゲンダイDIGITAL) - Yahoo!ニュース
普段はデモをしている人たちの多くをこちらも「為にするデモ」という感じで冷めた目で見てしまうんですが、しかし今回は割と同意できてしまうんですよね。
だって彼に対して何も権利の無い私たちには、文字通りデモをする位しか方法は無いんだから。


否応なくオリンピックが近づき、更に露になりつつある『民主主義の赤字』について。
みなさんはいかがお考えでしょうか?