『総論賛成各論反対』なこの世界に救いはないのですか

あるいは「フリーライダーが得をするこの世界に救いはないのですか」でも可。*1



地球温暖化の原因は人間の活動と初めて断定 国連IPCCが報告書 | 環境 | NHKニュース
そういえば「画期的」になると噂されていた国連IPCCの報告書が出たそうで。

IPCCは、1990年に最初の報告書を公表してから、人間活動が及ぼす温暖化への影響についての表現を徐々に強め、8年前の第5次の報告書では「温暖化の主な要因は、人間の影響の可能性が極めて高い」としていました。

今回の報告書ではさらに踏み込んで「人間の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と記し、初めて断定する表現となりました。

その理由については、産業革命以降に観測された急激な気温の上昇が、過去2000年以上の間で例がない水準であり、過去10万年で最も地球が温暖だったころの気温の推定値を超えていることや、人間の活動と自然の影響を両方とも考慮して試算した気温の推定値とおおむね一致していることなどが挙げられています。

地球温暖化の原因は人間の活動と初めて断定 国連IPCCが報告書 | 環境 | NHKニュース

「疑う余地がない」
まぁでも概ね私たち日本人の多数派意見ってってあんまり気候温暖問題に興味がないもんね。*2
自分たちの国さえ平和であればいいし、自分たちの権利さえ守られているならば他の国がどうなったってどうでもいい。
――まぁそれはそれで確かに合理的な=フリーライダーな振る舞いではあるので、ジャパンファーストな人たちを一概に批判はできないとも思っていますけども。そこでぬけぬけと全世界を射程に入れた「普遍的権利()」とか言ってたらやっぱり鼻で笑ってしまいますが。




ともあれ、ここまで断定する形で「気候変動の危機的状況*3」及び「人間による影響」を言っていながらも、しかし、結局、その対応の中身についてはほとんどスルーなんだなあと個人的にはガッカリするところではあったんですよね。
特にコロナな現代世界においては、賛否ありながらも国際機関はWHOを中心にかなり強い口調で具体的な行動を求めてきたわけじゃないですか。
それなのにそれと同じかそれ以上に重要な気候変動ではご覧の有様ですよ。
グレタさん「私たちにかかっている」IPCC報告書受け(TBS系(JNN)) - Yahoo!ニュース
そんなヌルい報告書に対して、空気を読まずに、いつものようにマジレスしてくれているのが我らがグレタさんであります

気候変動に関する国連の政府間パネルが地球温暖化の進行について強く警告する報告書を新たに出したことを受け、環境活動家グレタ・トゥンベリさんは「どう行動するかは私たちにかかっている」と訴えました。

 「この報告書には私たちにあれをしろ、これをしろ、と指示するような解決方法は書いていません。その部分は私たちにかかっています。私たちが決断を迫られているんです」(グレタ・トゥンベリさん)

グレタさん「私たちにかかっている」IPCC報告書受け(TBS系(JNN)) - Yahoo!ニュース

でもまぁ解決方法が書かれていない点について、理由は明白だよね。
それに合意できなかったから。それだけ。
総論賛成各論反対な私たち。


子供なグレタさんはともかく、私たち大人が気候変動問題を現実の問題として考えていく上ではこの『総論賛成各論反対』な構図は避けては通れないわけでしょう。
環境汚染が進む本質とは、マクロな社会全体ではなく、ミクロな我々にとってそれが利益に繋がるからに外ならない。
「俺は嫌な思いしてないから」というのはこの世界の真理の一つであり、だからこそその私益と公益を両立させる方法こそ、社会的動物である我々人類にとって永遠に考え続けなければならないテーマであります。


公益を実現する為に、上記WHOなどが密になるなマスクをしろワクチンを打てとこれ以上ないほど具体的行動を要請するように、個人の私たちに「あれをしろ」「これをしろ」と命令しなければいけない。
特に問題となるのは、今現在私たちがコロナ社会で目にしているように――あるいはそれが無いから失敗していると批判されているように――それを守らなかった場合の罰則や課税などの制度設計であります。
気候変動対策は「不要不急」だと居直る人たちをどうすればいいの???
――そうした具体的行動が形になることがあるかというと……うん、まぁ、そうねえ。
その具体的行動の選択肢自体は確かにあるんですよ。『飛び恥』などで話題になったように、飛行機で移動しない、自家用車を使わない、(原子力含む)再生可能エネルギーを使う、肉食をやめる、暖房を使わないetc。
特に個人のミクロな生活で言えば、暖房と自家用車を使うのをやめればほぼ半分になるのだから、人類すべてがそうすればいいのでは????
いやあ、こんな簡単な話なのに何で合意できないんでしょうね。


一方で、マスク・うがい手洗い・自粛生活・ワクチン! と政府の強制力と集団圧力によってそれらが進みコロナと戦っている今の社会情勢とは大違いであります。
だから気候変動だって同じようにそれを言えばいいんですよ。
国連などの国際機関が先頭に立って、更には政府がその個人の自由権やロックダウンや隔離など強制力を行使すれば。


コロナとの戦いでは実現できているのに、気候変動対策ではそれが実現できない理由とは。
解決方法や具体的行動をコロナでは言えるのに、気候変動ではそれを言えない理由とは。
気候変動対策を具体的に考えるうえで重要なのは、結局この点だと思うんですよね。




私たちは気候変動対策の為に、コロナ対策以上に生活スタイルを変えることはできるだろうか? 
あるいは国連などの国際機関が具体的な行動を指示する強力なメッセージを発信した際、それを受け入れることができるだろうか?
そして、「自粛しない不埒な上級国民たち*4」を目にした時、だったら俺も気候変動なんて知ったこっちゃねえ! とちゃぶ台をひっくり返さずにいられるだろうか?


(テドロスやバッハの失態、「自粛疲れ」「オリンピック開催のせいで気が緩んだ」といった言説が蠢く現代日本社会を見ながら)
……この世界に救いはないのですか。
みなさんはいかがお考えでしょうか?
 
 

*1:メイショウドトウちゃん実装記念タイトル。

*2:http://www3.weforum.org/docs/WEF_More_Sustainable_World.pdf

*3:今回の報告書の主題としてはむしろこっちなんですけども、まぁ日本で話題になっているのが『人間の活動』なのはやっぱり私たち日本人の認識を裏付けているようで面白い構図だと思います。

*4:バッハ氏の銀座散策 丸川五輪相「不要不急かは本人が判断すべきだ」 | 毎日新聞