真実よりも重要なもの

ポーランドの飛行機墜落の影響についてのお話。


ポーランド大統領機墜落、欧州の東西関係に影響も 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News
これは中々面白い記事。今回の事件はロシアとの関係ばかり語られるけど、EU内部対立のゴタゴタにもかなり影響すると思うんですよね。

【4月12日 AFP】ロシアで発生したポーランド大統領搭乗機墜落事故がもたらす衝撃は、かねてより問題含みだったロシアとポーランドの関係を大きく変える可能性がある――そして、ポーランドとロシアの関係の変化は、欧州内の東西関係という、より広範囲な政治に影響をもたらすかもしれない、と専門家らは指摘する。

「Russia in World Affairs」誌の編集者で政治アナリストのフョードル・ルキヤノフ(Fyodor Lukyanov)氏は、「(ロシアと)ポーランドの2国間関係のムードは、東欧全域に大きな影響を与える」と指摘する。

ポーランド大統領機墜落、欧州の東西関係に影響も 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News

実際、(隣国の宿命ではあるんだけど)ポーランドとドイツは仲が悪い。特に第二次大戦でのナチスドイツ等による被害を巡ってのいざこざで。
例えば、2002年頃の戦後に起きた東欧の旧ドイツ領からのドイツ人引き揚げ者の為の記念館の設立を巡る対立とか。ユダヤ人等の外国の被害者だけでなく、ドイツ人自身の苦難を後世に伝えようと言う試みはすごい勢いでポーランドから批判されまくった。加害者一辺倒ではなく被害者としての歴史も伝えていこうというドイツの試み。日本でもどっかで見たような図式です。そしてそれに対する「またドイツが暴れだすんじゃないか」というポーランドの危惧はまぁもっともでもあるんだけど。
そういうわけでロシア程ではなくても、ポーランドにとってはドイツも同様に信用ならない相手だった。実際その二国に分割されたわけだし。つまり今後ロシアへの反発からポーランドがより愛国的な政権になる事になれば、それは当然ドイツとの関係にも影響する。


またEU内部の対立軸もあって、統合派と政府間協議派という問題もある。ポーランドは当然後者な訳で。つまり最近(ソ連崩壊以後)になってやっと東欧の多くの国はソ連の影響から逃れる事ができた。ポーランドでいえば民主化によって国家主権を奪回したのが1989年で、まだ20年と少ししか経っていない。それなのに今度はEU統合によって国家主権が制限されるかもしれないという事に対する、ポーランドを始めとする東欧各国の拒否感は今も強く残っている。
そんなポーランドへの影響は、最近のギリシャの問題と同様に、EU統合に対する逆向きの加速要因となるかもしれないと。

 一方、人権団体「メモリアル(Memorial)」のアルセニー・ロジンスキー(Arseny Roginsky)氏は、ロシアとポーランドの歴史的な関係は非常に重いものだと述べ、「ポーランド人の意識にある『ロシアフォビア(ロシア恐怖症)』はますます強化されるだけだろう」とラジオリバティーに述べた。「ロシア人による罪を探そうとすれば、何かしらかの確証は得られる。国の指導者が何を言っているかの問題ではない。人々が何を信じているかというのが重要なのだ」

ポーランド大統領機墜落、欧州の東西関係に影響も 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News

悲しいけどそういう要素はあるんだろうと思います。実際に何が起きたというよりも、何がその心理に影響を与えるかが重要になってしまう。多くの人は信じたいものを信じる、特に大衆心理においては。そうして世論は形成される。
その意味において、確かに真実は重要ではない。