抗議の応酬よりも怖い沈黙

ポジショントーク気味な「まんじゅうこわい」な話ではなくて、むしろリアルに「中国こわい」なお話。


http://mainichi.jp/select/world/news/20100727k0000m030122000c.html
中国すごい。

 「洋上対決」は前日、同じ海域で10隻以上の中国漁船団が操業したのが発端だ。インドネシア警備艇がうち1隻を拿捕した。「排他的経済水域EEZ)内であり、他国は勝手に操業できない」(当局者)ためだ。だが約30分後、2隻の白い中国の漁業監視船が現れ、「インドネシアEEZとは認めていない」と無線で主張し、解放を要求してきた。
 警備艇はいったん、漁船を放したが翌朝、応援のインドネシア海軍艦船の到着を待って再び拿捕した。だが中国側は、海軍艦の登場にもひるまなかった。ファイバー製の警備艇は被弾すればひとたまりもない。やむなく漁船を解放したという。中国監視船は5月15日にも拿捕漁船を解放させていた。「武装護衛艦付きの違法操業はこれが初めて」(インドネシア政府当局者)だった。

http://mainichi.jp/select/world/news/20100727k0000m030122000c.html

個人的に思うのは、よく言われるアメリカと中国の海洋戦略の対立などよりも、ずっと「生々しい」ですよね。彼らはある意味で、そのお互いの能力故に、少なくとも表面上は抗議などによる紳士的な振る舞いを崩していない。しかしアメリカのような強敵が相手では無い時中国はそれはもうガンガンいく。それは「法の支配」が及ばない所では、いつだってリアリズムな彼らは暴力が全てを解決すると信じているから。
だから彼らはそのまま暴力を背景に、無理を通して道理を蹴っ飛ばす、と。


で、それをされた側のインドネシアはというと。

 大国・中国との経済関係などを優先するインドネシア側は事件を一切公表していない。だが、ユドヨノ大統領は今月22日の閣議で、「南シナ海に新たな緊張がある。ナトゥナ諸島はこの海域に近い」と、いささか唐突に「ナトゥナ」の名を挙げて懸念を示した。

http://mainichi.jp/select/world/news/20100727k0000m030122000c.html

うわぁこわい。普通に抗議したり遺憾の意を表明するよりもずっと生々しくて嫌です。よくあるめんどくさい問題を無かった事にする時の、そもそも初めから被害者など居なかった、的な話。まぁ身も蓋もない言い方をすれば「泣き寝入り」です。

次は失敗しませんように

さて置き、以前の日記でも書いたんですけど、こうした事を見るとやっぱり中国周辺地域特に南シナ海は少し前から、そしてまだ今後もしばらくの間は、19世紀ヨーロッパのようなバランスオブパワーの舞台になっていくんだと改めて思います。そして特に中国一国のみが、インドや日本そしてアメリカを相手にやりたい放題までいけるかというと、おそらくまだ当分の間はない。かつてヨーロッパの大陸を支配するだけの突出した力を持った国が無かったように。


そして今後もこうした中国の動きを牽制する流れは硬軟合わせて加速していくんでしょう。まさに勢力均衡させようと。
しかしそれでもかつてのヨーロッパの勢力均衡政策が、長期的にはドイツの力の増大によって致命的な問題を招き、最終的にこのシステムの終焉をも招いたのは、まぁあまり思い出したくない教訓ではありますよね。