メルケルさんちの家庭の事情

というわけで何か思ったよりも(日本以外で)大事になってたので、この前のようなお茶を濁す程度に適当なことだけじゃなくて、もう少しだけ書くことに。ドイツさんちの家庭の事情のお話。
前回日記「死亡証明」なのか「生みの苦しみ」なのか - maukitiの日記



http://www.cnn.co.jp/world/30000585.html
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/101019/erp1010192125014-n1.htm
独メルケル首相「多文化主義社会は失敗した」の衝撃 (1/2)

 メルケル発言について、欧州の移民政策に詳しいアムステルダム大のエリナス・ペニンクス教授は「移民禁止という右派の主張や移民に寛容すぎる左派にクギを刺して、CDUを中道に誘導しようした」と分析。

http://sankei.jp.msn.com/world/europe/101019/erp1010192125014-n1.htm

ドイツのまともな政治家の人たちが、結局の所何を一番恐れているのかって、未だにトラウマで強迫観念にもなってる「アーリア人至上主義」の再来ですよね。
まさに今オランダやスウェーデンデンマークなどで現在進行形で起きていて、勿論それはフランスだってイギリスだってアメリカだって日本だって極当たり前に懸念している、過激な民族主義者や極右との摩擦。
当然ドイツだって同じようにそれを懸念はしているんだけども、でも他の国とはその度合いが全然違う。全力で、本気で、それこそトラウマや強迫観念というレベルで、恐れている。あの時のアレが再び起こってしまうことを。


かつて19世紀の終わりごろからロシアや東欧で起きたユダヤ人迫害によって、ドイツなどに溢れたユダヤ人は、まぁ当然の如く(別に彼らが特別に酷かったという話ではなく、新しくやってきた「余所者」として当たり前に)それまでの現地住民との軋轢を生んだ。そうした土壌は過激な民族主義者たちが支持される一助となったし、そして最終的にはあのホロコーストにまで至ったと。


そうした過去と現在の移民の問題を比較して、外部の私たちからすれば確かにそれは「そんな事にまではまぁほとんど起こらないだろう」と楽観視してしまえるような最悪のシナリオだけれども、でもドイツは違う。彼らにはまさに過去にあった悪夢の記憶であるから。
だからオランダやスウェーデンデンマークで起きているような、わずかな極右政党の伸張でさえ、許容できない。
私たちからしてみれば「たかが議席の内のわずかな一部ではないか」と大した事ないと思うようなことであっても、しかし彼らには過敏に過去のトラウマや悪夢を思い起こさせてしまう。まぁそうした経験のない・実感の沸かない人たちからすれば確かにそうした反応は過敏に過ぎるし、大袈裟と言うことはできるかもしれない。しかしそれでも尚、ドイツの例が示すように、それは最悪のシナリオとして提示されている。


まぁつまり「多文化主義」なのか「単一文化主義」なのかが、問題の焦点というわけではなくて、実際の所はそんな「いつか見た馬鹿な主張を掲げる政党」こそが恐ろしいと。今起きている問題をただ座視するのではなく、多文化主義だろうが何だろうがとにもかくにも、どうにかして移民摩擦を抑えなくてはならないと。


その意味でメルケルさんの発言には重みがあります。というよりも、それを「メルケル首相が」言ったからこそ、重みがありますよね。