そこに是非などない

現代中国の行動原理のお話。


Opinion & Reviews - Wall Street Journal

 大前提として、中国政府は、自国と、米国、日本、西欧との緊張関係を、不可避なだけでなく「構造的」なものとしてもとらえている。中国の政治指導者や戦略家は、既成の大国が新興国の経済力や軍事力を常に封じ込めようとするという現実主義的前提からスタートする。このことは、中国の戦略家の手になる100点以上の近年の論文についての筆者の調査でも明らかであり、その5分の4は、アジアにおける米国および同盟国の行動の自由を低下、束縛、圧倒または出し抜くことによって、継続的な「戦略的な中国封じ込め」に対処することに関するものだった。実際、中国が台頭を続け、中国の権益が拡大するならば、これは、中国共産党の立場から言えば、不安が低下するよりむしろ増大する構造的な理由となる。

Opinion & Reviews - Wall Street Journal

なるほどなるほど。大変面白いお話ではあります。
つまり、中国は自らが「中国は大国であり、ほかの諸国は小国である。それは単なる事実だ」という風に語ることについて、それが当然の行為であると確信しているのと同様に、新興国(中国)の伸張に対して周辺国が圧力を掛けてくるのは当然の成り行きだとも思っている。
その両者はどちらも避けようのない構造的な問題であると。確かにその見方には概ね賛成できます。


その意味で言えば確かに、中国さんの振る舞いは一貫しているとも言えるんですよね。私たちからすれば、今となってはあまりに時代遅れ感がすごいけども、しかし現代においても彼らは彼らの論理の中で生きている。かつてあった現実主義的なバランスオブパワーな論理と共に。
私たちはしばしば、勃興する中国を見て「今後どんどんやりたいことをやっていくに違いない」と懸念をするけども、しかし彼ら自身ではそう思って居ない。むしろ彼らは彼らの信じている論理によって自らの力の増大と共に「今後ますます周囲からの圧力は高まりやりたいことがやれなくなっていくだろう」と思っている。それは段々と形成されつつある中国包囲網であるし、そしてノーベル平和賞という圧力であると。


少し前から言われていた、何故か無意味に強行策に走りがちな中国の不可解な行動、ってそのように考えるとかなり納得できるんですよね。彼らは、私たちが思うような「強大になった分だけより自由に振る舞える」というのと同じ位、「強大になった分だけより敵が増える」と確信しているから。だからこれまで以上に、自らの安全の為にも、より攻撃的にならなければならない。
彼らはそうやって自らのパワーを誇示することに躊躇いはないし、しかし同様にまた周辺国が中国に圧力を掛けるのも当然だと思っている。それはある種の自然の摂理であり善悪の問題ですらないのであって、故に是非などないと。