もう逃げ場がなくなってしまった

以前書いた「ググレカス」の先にあるもの - maukitiの日記に近いお話。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/13368
日本でも昨今よく叫ばれている問題の一つ。でもそれってやっぱり日本だけじゃないわけです。

 しかし、近年の格差拡大は米国に限られた現象ではない。経済協力開発機構OECD)によれば、データが十分にそろっている先進国22カ国について調べたところ、1980年代半ばから2000年代後半にかけて所得格差が拡大した国は17カ国を数えたという。

 「(格差の)レベルが以前よりも高い平均値に収斂しつつあるのではと思わせる兆しがいくつか見られる」とOECDは最近のリポートで指摘。また、「これまで格差が小さかったデンマークやドイツ、スウェーデンといった国々も、格差拡大のトレンドを免れているとはもう言えない」と記している。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/13368

まぁそういうものなんだろうなぁと。
「物流倉庫が完全に自動化された世界でフォークリフトドライバーになっても面白いことはない」その通りであります。結局の所、効率性を追及した先にあるのはそうした自動化や人件費の削減に行き着くのだから。だから進歩の先にある必然の結果でもあるんですよね。
それが嫌なら根本的にパイを大きくするしかない。しかしパイを大きくしたらやっぱり競争も激しくなるわけで。更にはこれ以上パイを大きくすると「地球マジヤバイ」という事態になりつつもある。


で、そうすると残された道はより上層に集中した「中央集権化して生き残る」しかない、と。
まるでかつて政治権力が通った道をなぞっているようですよね。でもある意味でそれ以上に悪い。それぞれに独立した国家主権ならば、各々が中央集権化するなり連邦化するなり、各自の選択があったんだろうけど、しかし『一つの世界市場』の前にはそんな贅沢は許されない。


民主主義と資本主義という両輪

あるいは他の要因として考えられるのが、長期安定してそうした経済格差の硬直化というトレンドが続くのって政治的な安定の裏返しでもあるんですよね。
「豊かになるのは金持ちばかり」まさにその通りであります。そして、歴史的にもほとんど古今東西どこでもずっとそうだった。故にいつだって貧しい人びとは貧窮に追い詰められた時、そんな一発逆転のチャンスを待望し、それに掛けてきたわけです。
しかしそんな革命や戦争など、社会構造が劇的に変動する機会は、先進諸国においてはもうほとんどなくなってしまった。
フランシス・フクヤマさんが『歴史の終わり』で述べていたように「民主主義とは、もっとも内乱や革命が大規模化しにくい政治体制である」という輝かしい勝利によって。



もちろんそれは素晴らしい結果です。
しかしそれでも、社会構造を揺さぶる大事件は、同時に旧来の社会構造を再攪拌させる機能もあったわけなんですよね*1。だから幸運にも私たちはこれまでそうしたことを気にせずにやってくることができた。それはかつては革命や戦争が避けられなかったからでもあるし、そして持続的なパイの拡大も可能だったから。
しかしもうどれも難しくなってしまったんです。


ということで、現在に至り、私たちは人類史上初めて『経済格差』問題とまともに向き合うことになったのかなぁと。これまでずっと伴にあったものの、しかしその根本的解決に悩むことなく先送りし続けてきた課題が、ついに逃げ場が無くなってしまった。完全解決できるのか、それとも新たな逃げ道を見つけることができるのか。


解決できたら、それはとってもうれしいなって。