正しく国民を映す鏡

前回短命政権を嘆きながら失言を攻撃する人たち - maukitiの日記続き。
よく現在の民主党政権を批判する言葉として「現実が見えていない」とか「夢想的である」なんてものがありますけど、確かに僕もそれはかなりの部分同意します。でもそれって私たちの側にも当て嵌まることでもあるんですよね、なお話。



以前日記のタイトルにもしましたけど、某スヌーピーのよく引用される名言の一つとしてこんなものがあるんです。

「時々あなたは、どうして犬なんかでいられるのかと思うわ……」
「配られたカードで勝負するしかないのさ、それがどういう意味であれ」

もう一つ、あの悪名高きラムズフェルド元国防長官もこんな事を言ってました。

「いま持っている軍隊で戦争をやるのであって、ほしいと望むような軍隊でやるのではない」*1

まさにその通りなわけです。私たちは結局の所、良かろうが悪かろうが、いつだって手持ちのカードで勝負するしかないのであって、自分がこうあって欲しいという願望をアテにしてやるわけにはいかないのです。それは言うまでもなく現在の民主党の中の人たちに是非とも理解していただきたい話ではあります。「いま現実に持っている能力で政治をやるのであって、こうあるべきという妄想で政治をやるのではない」と。
ダメならダメなりにやるしかないのであって、ダメな所を隠そうとして更に『大きなこと』を叫ぶのだけはやめて欲しいなぁと。まぁそれぞれ1代目、2代目、3代目と徐々にマシなってきたように見えるのはわずかな救いなのかもしれませんが。


そしてこれは政権の中の人たちだけでなくて、私たち有権者の側にも言えるんですよね。
「私たちは二年前に選んだ政党に政治をやらせるしかないのであって、こうあって欲しいという完全無欠な政治家でやるのではない」のだと。現実に民主党の人たちってそんな失言しない気の利いた人たちではまったくありませんよね*2。そんなこと既にもう解っているはずなんです。しかしそれでも一部の人びとはそれを求めてやまない。そんなもの手に入りはしないのに。そしてそれに見合わないとすると排除しようとする。


手持ちのカードで勝負するのではなくて、『こうあるべき』という願望だけで勝負に出ようとする。
別にこれって民主党だけの悪癖というわけでは決してない。『失政』ではなく『失言』で多くの大臣を攻撃してきた国民やマスコミの側だって同じ視点に立っていると思うんです。その意味で正しく『政治家は国民を映す鏡』を証明していますよね。


そんなありもしない政治家像ばかり夢見ていながら、そしてまさにそれ故に、短命政権が続く一因を生み出している私たち。国民が強く望めば望むほど、それに応えようとする政治家の側との共謀によって、しかし逆説的に政権寿命の平均値は目減りしていく。こんなの当たり前の話ですよね。
まぁ別にそれが望みならそれでもいいと思うんです。国民はいつだって気に入らない政治家や大臣を(選挙によってではなく)辞めさせることができるのだと。確かにそれは一つの選択肢ではあるのでしょう。ただそれならそれで同じ口で「短命政権はよくない!」とか言うのだけは気が抜けるのでやめて欲しいと思います。えーいどっちやねん。

*1:彼が2004年のイラク戦争に向かう部隊に対して語った言葉。『アメリカの終わり』(フランシス・フクヤマ著)より。

*2:デリカシーがないという点では、「北朝鮮の砲撃は神風だ」なんて言った人も居ましたよね。「北朝鮮の砲撃は神風だ」 「民主幹部が発言」報道 : J-CASTニュース