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ミュンヘン会談の二の舞を演じないために

将来やってくるかもしれない「台湾帰属問題」はどこで会談されて何という会談になるんでしょうね。


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台湾へ新型F16売却見送り、米議会で反発必至 : 国際 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
まぁ意図としては理解できるんですよね。中国も台湾にもどちらにもいい顔をしておきたい、というきもち。
結果としては台湾からも中国からもどちらの好感度も下がるというとっても愉快な事態になっているわけですけども。またこれでオバマさんその両サイドから批判されるんだろうなぁといういつもの暖かい気持ちにはなりますニュース。ていうか選挙大丈夫なんでしょうか。


さて置き、こうしたどっちつかずは確かに批判を免れ得ないものではあるんでしょうけど、しかしまぁこれがそこまで悪い選択肢なのかと言えばそうでもないですよね。
結局の所、アメリカにとって台湾を失うことは勿論失敗ではあるんだけれども、しかし台湾有事が起きてしまうことも同時にまた失敗なわけなんだから。
つい先日フォーリン・アフェアーズの日本語版で一部無料公開されたロバート・カプランさんの論文では、そのようなアメリカの採るべき戦略についてこう仰っていました。

 だからこそ、ワシントンと台北は、中国の軍事力に非対照的に対抗していく方法を考えなければならない。目的は、台湾海峡における紛争で中国を打倒することではない。戦争を開始するコストを大きく引き上げ、中国に戦争そのものを断念させることだ。そうできれば、中国がよりリベラルな社会へと変貌するまで、台湾を独立した政治単位として機能させることで、アメリカは同盟国の信頼をつなぎ止めることができるかもしれない。

http://www.foreignaffairsj.co.jp/essay/201107/Kaplan

中国の伸張と共に『台湾有事』が現実のものとして語られるようになってきた昨今ではありますが、やっぱりそうした危機に対処する最高のタイミングとは「それがはじまる前」なわけです。カプランさんは特にその『予防措置』を重視するポジションにあって、まぁ確かにそれはそうだろうなぁと同意するしかございません。
もちろん万が一の時の、「アメリカは台湾の為にほんとうに血を流すのか?」という話は重要ではあるんですけれども、しかしぶっちゃけもうそこまでいった時点である種の負けなわけです。それよりは今は未だ如何にして危機を避けるのか、という事に念頭が置かれるのは当然の帰結かなぁと。


こうした構図における歴史の教訓がやっぱりあの有名な『ミュンヘン会談』になるんでしょう。
それはあのヒトラーに対する宥和政策が失敗だったというわけではなくて、そこに至ってしまったこと自体が、そしてそうした『宥和』以外の選択肢が事実上なかったことこそが、(特にイギリスにとっての)あのミュンヘン会談の失敗の歴史として語られるわけです。ドイツに屈服したことが悪かったのではなくて、そこから得るべき真の教訓とは「何の準備もせずにそこに至ってしまった」ことにあるのだと。
その意味で、最悪の事態を招くことを避けつつも、しかし最後の選択肢も放棄しない、という無難でつまらない結論になるのは殊更に批判することでもないかなぁと思うわけです。それってこれまでの多くの歴代大統領と同じでごくフツーのアメリカの(現実主義的な)ポジションでしかない。