そして、最高意思決定の段階では現実なるものはしばしば存在しない

前線(ゴミ処理場)から遠のき、楽観主義が現実に取って代わってしまった人たちのお話。『遠すぎた橋』ならぬ『遠すぎたゴミ処理場』で映画化狙えばいいんじゃないかな。



市長の発言が危機招く…小金井のごみ行き場なし : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
ということでこうしたゴミ処理場問題は所謂『NIMBY――not in my backyard』(私の庭にはご免こうむる)なお話として、しばしば、政治問題における重要な争点となるわけです。まぁそりゃそうですよね。誰だって理屈としては必要であることは解ってはいても、しかしその反発心や感情をすべて飲み込めるかというとそうではない。にんげんだもの。ここ数年来ずっと国政レベルでも議論になっている軍事基地とか原発とかも広義のNIMBYと言えますよね。


で、今回の小金井市のお話がそういう話なのかと思ったら、まったくそんな事はありませんでした。

自前のごみ焼却場を持たず、周辺自治体に可燃ごみの処理を頼っている東京都小金井市が、今年度分をまかなう量の引受先がいまだ決まらず、危機的な状況に陥っている。

 背景には、今年春に初当選した佐藤和雄市長が、「ムダ使い」「ごみ処理4年間で20億円」などと選挙戦で主張し、周辺自治体に委託費を払い始めた2007年度以降の可燃ごみ処理費増を批判したことなどに端を発した周辺市との摩擦がある。佐藤市長はおわびに奔走しているが、最悪の場合は「収集ストップ」もあり得るとして、市は10月上旬、緊急のタウンミーティングを開いて市民に現状を報告する。

市長の発言が危機招く…小金井のごみ行き場なし : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

NIMBYとか、負の外部性とか、『自前処理の原則』への反発とか、そういうレベルでさえなかったぜ。
「ムダ使い」「ごみ処理4年間で20億円」などと選挙戦で主張してたそうです、なんというか気の抜ける話ではありますよね。無駄遣いだから自前の処理場を持とうとか、無駄遣いだからゴミを減らそうとかそういう話ですらないんですね。そりゃ周辺自治体もキれちゃうのも仕方ない話です。まぁ逆説的に、周囲から甘やかされてきた結果、彼らはゴミ処理問題という『現実』が見えなくなってしまったとも言えるんでしょう。彼らがこのモンスターを育ててしまったのだ。


さて置き、この(政治的問題ですらない)問題で一番近い構図は何かと言えば『給食費未納問題』でしょうか。給食費を払おうとしない親と、ゴミ処理費を払おうとしない市長。美しきシンクロニシティ。きっと小金井市には給食費未納へと至ってしまうような有権者たる親御さんたちによって、この素晴らしい市長の政策は支持されたのでしょう。――え、政策? 
「そんなものに金を払うなんてムダだ!」
……はぁ、そうですか、いいから払ってください。