独裁政権打倒→世直し運動→イスラム復興

見事すぎる三段論法、あるいは見事に漁夫の利を得た人たち。やっぱりイラン革命の繰り返しでしたね、というオチ。


エジプト 議会選挙の第三段階がスタート: The Voice of Russia
asahi.com(朝日新聞社):イスラム政党が大勝へ=議会選の最終投票―エジプト - 国際
エジプト議会選 最終投票開始 NHKニュース
ということで残り一回を残しながらも、第一回第二回の結果から既に――一部アレな人からすると「予想外」なんて間抜けなことを言い出す人も居ますけど、しかし大方の人の予想通りに――エジプトではイスラム勢力・イスラム系・イスラム原理主義の人たちが勝利しそうなエジプト選挙であります。


しかしまぁ別にそれも考えてみれば当たり前の話だと思うんですよね。つまるところ、彼らが打倒しようとしたのは腐敗した独裁政権であると同時に、腐敗した『世俗』政権でもあるわけだから。故に彼らがその勝利の証である新政権への投票において、世俗派を選ぶはずがないじゃないですか。それじゃ過去の失敗を繰り返す事に他ならない。
「世俗的」な「独裁政権」というものを一変させようとして、「イスラム的」な「民主制政治」を求めた人たち。


そもそも『イスラム復興』とは、イスラムのルールの下での世直し運動、というものでもあったわけで。だからこそ彼らはその過激な思想と同時に、(イスラム的な)社会構造の建て直しの為に特に医療・教育・福祉などのサービスの提供も同時に行ってきました。
そう考えればムスリム同胞団サラフィー主義者のような人たちが選挙で勝つのは当たり前ですよね。まさに彼らは世俗派の独裁政権がバカなことをすることによって、千載一遇の好機を得ることになったのでした。彼らの世直し運動は、敵の過失によって、ほとんど無条件で受け入れられる様な下地を得ることになった。なんという漁夫の利な構図でしょう。
そんな原理主義的な人たちは改革すべき邪悪――世俗派に勝利することを本気で望んでいたし、そしてそれを選ぶ有権者たちの側もその建て直しに伝統的な社会規範を求め、かくしてエジプトの二大原理主義政党が勝利する。それは当然の帰結であると。



独裁政権による世俗派の失敗は、そのまま直接に独裁政治への不満だけでなく世俗化へも波及し、そしてその腐敗と混乱の建て直しの為にイスラム的世直しが見事に合致する構図。
いやぁイラン革命ってやっぱりものすごくよくできていたんだなぁと改めて思ってしまいます。正直その三段論法には隙が見当たりません。コプト教徒たちがその恐怖から暴れてしまうのも納得ですよね。彼らの天敵が絶対多数の『正当』な政権を握ってしまうことへの恐怖。
その意味でやっぱり行き着くのは『イラン化』という所なのでしょうか。それこそ中東イスラム国家において、最も民主主義が進んでいるイランのやり方。イスラムの傘の下の民主主義。
ともあれ、イスラム教ってこうした(革命による)民主制と、実はものすごく相性がいいのかなぁと。