『あるべき姿』から趣味や嗜好の問題となってしまったもの

それを進化と呼べばいいのか、あるいは退化と呼べばいいのか。


新人の女性社員に妊娠発覚 「休職します」と言われたが… : J-CAST会社ウォッチ
わーたのしそー。
ともあれ、このマネージャーが言うことを完全に否定できる、という人も実はあまり居ないんじゃないかと思うんですよね。その怒りとはつまり、かなりの部分で自分が休んでしまった時の罪悪感などの、責任感の裏返しでもあるわけだから。自分が病休した時に職場の同僚に対して、それは自分の不可侵の権利であり故に自分にまったく瑕疵はない、なんて言い切れる人も珍しいんじゃないでしょうか。まぁ世の中には「自分に甘くて他人に厳しい」という方も結構いらっしゃいますけど。
しかしまた世の中には「解っていても口に出してはいけない」ということも結構あるわけで。素晴らしき建前の社会。その意味で彼は「口に出してはいけない」ということを見事に言い放っているという点において、皆様がツッコまれているような別に休んだ奴の穴埋めを出来ないから失格だという以前に、そもそも自分の言動を『マネージ』出来ていない点で既にマネージャー失格であるわけです。


結局のところ、今回のような解りやすくバカな例はむしろ少数派なんですよね。なにせそれは明確に違法なんだから。
故に多くの場合では、賢明な採用者たち(男性だけでなく女性さえも)ほど敢えてそれを口に出さないことで『暗黙の了解』あるいは『空気』を作り出し「次からは妊娠しそうな女性は採ることをやめよう」と決意し、そして雇われる側の賢明な女性たちほど「妊娠しないように避妊に気をつけよう」と決意するのでした。
かくして経済的事情による少子化は止まることなく進んでいく、と。貧しいから産まないというだけではなくて、稼げるからこそ産まない。
法によって人々の考え方・意識そのものが変えられるはずがない、というよくある失敗です。
いやぁどうしようもないですよね。といってもこれが日本だけが特別にダメというわけでも当然なくて、(移民でごまかしている所はともかく)ほとんど全ての先進国で見られる光景でもあります。故に「移民やろうぜ!」なんて声が日本でもずっと議論されていたりするわけですよね。私たちの人間社会は一般に伝統的価値観や宗教などから解放され『賢明になればなるほど』少子化が進んでいく。
そんな流れをなんとか止めようと様々な対策を目に見える形で――例えば上記雇用機会均等法や育児・介護休業法や、あるいは女性の社会進出など――やろうとすればするほどしかし逆に『暗黙の了解』『雰囲気』『空気感』など目に見えない内心の思考や考え方などがより強固になっていく。本来、問題解決する為にはむしろそっちの方をどうにかしなければいけなかったのに。


といっても僕にはどうしたら私たちのそれを変えられるのかなんてさっぱり解りません。だからこそ少子化問題は止められないのでしょう。だってそれは『合理性』云々を言い出したらほぼ必ず負けてしまう論理であるから。私たちが敢えて不合理なことをしたくなる理由。文化や宗教など、経済的理由以外のなにか。趣味や嗜好といった分野にまで足を踏み入れかけている女性の出産について。
皆さんはいかがお考えでしょうか?