橋下さんにできて民主党にできなかったもの

ということで微妙に昨日の続き。例によって別に黒だの白だの言いたいわけではなくて、ただ端から見てなぜ一部の世論的にかくも差がついてしまいそうなのか、について。
とある民主党の存在理由 - maukitiの日記
民主党は何ひとつ政権交代の成果を見出せないまま、ついには最終的に『消費税増税』という険しい山に挑まなくてはならなくなってしまっている。まぁ悲しいお話ですよね。


しかしその教訓として、あの悪名高きマニフェストの中身のように別に「出来もしないことを言うな」という点が全て悪かったわけじゃ決してないのです。むしろそうした美辞麗句を並べる事だって民主的選挙においては必要悪な面があることもまた否定できないわけで。民主党が失敗したのは、結局のところ、それが最初一歩だけでも上手くやっておけば残りも上手いこと言ってかわせたはずが、それさえもできなかったという点にあるわけですよね。
中国経済が専門であるドワイト・パーキンス教授*1は、訒小平らの改革の成功例から得られる教訓として次のように述べています。

「将来、改革を行おうとする政治家にとって、中国の改革の教訓は忘れられがちだがあきらかだ。はっきりと勝てる部分から、改革に着手すべきである」

つまりそういうことであると。それを何故か普天間基地だとか25%削減だとか、まったく「勝てそうにない」部分から手をつけてしまった人たち。
身も蓋もなく言ってしまえば、たった最初の一件だけでも、上手く『改革』していれば現在のような状況には陥らなかったのに。


その意味で、そんな民主党さんとは反対に見事に成果を出して逃げ切れる構図を作り出したのが――浪花の独裁者だのヒトラーだのと非難される――大阪府知事たる橋下さんであるわけです。その両者は『とてつもなく野心的な(幻想的な)改革を掲げる』という点で大して差はないにもかかわらず、しかしそれでも橋下さんはその『最初の一歩』を見事に成功させつつあることで、次の勝負に打って出る――そこで負けても致命傷にならない程度の地盤を築きつつあるのでした。
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労組だとかバス運転手だとか。解りやすく、そして何より与し易い相手こそを、最初に選ぶことによって後の失敗の保険とする。ありふれたお話ではありますよね。実際、橋下さんの『大阪都構想』なんて民主党のそれと比べても同じくらいアレなんですけど、しかしそれを失敗したとしても尚、おそらく橋下さんは結果的に勝者となるのでしょう。だって最初の一歩目で彼の存在理由を確立できているのだから。別に100個の嘘を並べてもいいから、たったひとつでも現実的に実現可能な何かを並べておけばよかったんです。例えそれで結果的に、100個の内の1個しか実現しなかったとしても、しかし100個中0個とではそれこそ天と地の差があるんだから。


勝てそうな所からやっている橋下さんと、そして勝てそうにない所からはじめてしまった民主党。両者は限りなく同じ場所に立っていながら、しかしそのたった一つの違いだけがこうして差を生んでしまうのでした。
そして第三の刺客たる野田さんがまず最初に、そして唯一勝てると見出した改革が『消費税増税』っていうオチ。一体なんでこんなことに。