ブレない男

先日の日記のオチ。


鳩山元首相:「逸脱発言、一切していない」イランから帰国− 毎日jp(毎日新聞)
時事ドットコム:「IAEAは不公平」=鳩山氏発言として紹介−イランTV
朝日新聞デジタル:鳩山氏「IAEAは二重基準」と発言か 同行議員は否定 - 政治
わーたのしんできたようでなによりです。

 イランを訪問していた鳩山由紀夫元首相は9日、帰国後に国会内で記者会見し「今回の訪問で、政府の考えている線を逸脱するような発言は一切していない」と強調した。共同通信によると、イラン側は鳩山氏がアフマディネジャド大統領との会談で、国際原子力機関IAEA)がイランなどに二重基準的な対応をしていると発言したと主張しているが、鳩山氏は会見で「全くの捏造(ねつぞう)だ。(イラン側に)遺憾だと伝えたい」と反論した。
 鳩山氏は会見で大統領との会談での自らの発言について「NPT(核拡散防止条約)が、非核保有国の平和利用を査察するのは公平ではないことは承知しているが、日本は疑念を払うために(IAEAに約50年間協力し)原子力平和利用を進めてきた」と発言したとした。

鳩山元首相:「逸脱発言、一切していない」イランから帰国− 毎日jp(毎日新聞)

しかしまぁ鳩山さんの弁明を聞くと、そりゃそう採られても仕方ないよなぁという気はしますよね。ていうか弁明しているように見えて、実はそのまんまのこと言ってないですかこれ。


まぁ言いたいことは解らなくはないんです。IAEAの監査の前提であるNPTが不平等である、というのはそれこそかなり使い古されたお話ではあります。元々核保有国を限定するための条約なわけだから、IAEAはともかくとして、NPTそれ自体について「不平等だ!」というのは確かにその通りなのでしょう。NPTで謳われている核兵器保有国に対しての「誠実に核軍縮交渉を行う義務」なんて誰がどう見ても建前に過ぎないわけですし。しかしまぁ当然の帰結として、それを言っているのって大抵核兵器開発と保有を視野に入れた人であるわけで。つまり実は鳩山さんは……以下略。
そんなイランさんの批判とは裏腹に、実際の所、IAEAってものすごく細心の注意を払って(内政干渉との境界線を気にしながら)査察をしてもいるんですよね。むしろそのせいで、しばしば、その無力さを批判されてもいる位で。今回の騒動の発端となったIAEAの対イラン決議案にしても、現事務局長となった天野さんが率先して進めた、という風に言われてもいましたし。


さて置き、いつもの如く彼はそこまで考えてないんでしょうけど、もし私たち日本が正式にそこに疑問を呈してしまうと、実はものすごく重大な結果をもたらしてしまう可能性があるのです。
つまりもし日本のような同盟国が『現在のNPTとIAEA体制』について疑念を持つなんて言い放ってしまうと、アメリカさんちにとっては最も重要な同盟国の一つである日本を取るか、それとも世界の核不拡散の基盤であるNPT体制を維持するか、というある種究極の選択を迫られてしまうのです。故にそれは冷戦以降アメリカさんちにとっては最悪のシナリオの内の一つとして想定されているわけで。日本の核武装化。だからこそ、少し前のクリントン国務長官のように、日本への核の傘の提供について「その義務の遂行に決意をもっている」なんてあからさまに表明してみせるのです。


ということで実は、アメリカを大変困らせてやる、という点では彼はとても正しい手法をとってもいるのではないでしょうか。その意味で心底彼はブレていない。さすが『史上最強の元首相』だと言うことはできるかもしれません。