外敵が消えた人たち

確かにそれは良いことでもあるんでしょうけど、でもそれだけじゃないよね、というお話。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34968
これまでもうちの日記でも書いてきたお話ではありますけど、まぁ結局そういうお話になってしまうのでしょうか。以前の日記でも書きましたけど、特にサルコジさんがこのまま大統領選で負けてしまうと、ここ20年近く続いてきた欧州連合内でのドイツとフランスの協調路線が崩壊してユーロ危機再炎上、にリーチが掛かってしまいそうですし。

 集団アイデンティティーは、危機時や戦争下で形成されることがある。しかし、現在の危機は「ヨーロッパ人を生み出す」どころか、EU諸国の市民に、古くから存在し、より深く根差す国家的アイデンティティーに頼るよう仕向けている。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34968

そうは言っても、周辺から『外敵』の居なくなったヨーロッパにとってはこうなるのはある種必然ではないかとも思うんですよね。人工的に生み出された超国家的な集団アイデンティティーの成功例としては、アメリカ合衆国やドイツの関税同盟やらが有名な例としてありますけど、やっぱりあれも周囲の大国から組織的に対抗する為に、その意識が醸成されたという側面もあるわけで。
その意味で、やっぱり旧ソ連が存在していた頃は防衛線としての欧州連合が存在意義としてあったし、そして冷戦以後のアメリカが一極化の超大国として振る舞い始めた頃にもその対立軸としての存在価値・目指すべき理由がヨーロッパの人たちには現実の問題としてあったのでした。
でも、そのどちらも最早消えつつある。外敵が消えつつある人たち。あるいはその間にやらなければいけなかったのに、間に合わなかった人たち。そりゃ「もう纏まる必要もないよね」と感じてしまうのも無理はないのかなぁと。


上記リンク先ではイタリアの例を出して「ヨーロッパ人」を生み出すことの難しさを説いていますけど、個人的にはより適しているのがベルギーの現状ではないかと思います。
それまで文字通り「ヨーロッパ統合の象徴」だったベルギーが欧州連合に統合されていった結果、その内部での地域対立によってあの541日間という無政府状態に陥っていた構図。実はあれって逆の意味でも「ヨーロッパ統合の象徴」だったんじゃないかなぁと。