約束された敗北の選挙

「こうなったらイチかバチかで財政同盟だー!」

「……ダメでした」(←今ここ)



http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35144
ということで日本が黄金週間だのと浮かれている間に、欧州では何の因果か各国選挙の日程が重なりまくってある種の黄金週間が生まれていたのでした。フランスとギリシャを筆頭に、セルビアアルメニアまで。色々運命を感じてしまう日程ではありますよね。まぁタイトルの通り、大勢は既に決していてあとはどんな風に負けるのか、という所が議論になっていたりするわけですけど。
時事ドットコム:連立与党、過半数達せず=緊縮反対の野党躍進−ギリシャ総選挙
社会党オランド氏が勝利…仏大統領選 : 国際 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
ということでまぁやっぱり見事に負けてしまったフランスとギリシャの与党の皆さまでありました。おつかれさまでした。

 欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁は最近、統合強化に向けた勢いが急速に失われていると嘆いた。

 EUに懐疑的な左派と右派双方の政党が大統領選挙の第1回投票で30%近い票を獲得したフランスでは、ニコラ・サルコジ大統領が、バスポートなしで行き来できるEUシェンゲン協定からの離脱をほのめかし、(ユーロに次いで)最も人目を引く欧州統合の象徴を標的にした。

 オランダでは、先月起きた連立政権崩壊で一番得をした政党は、右派のポピュリスト、へルト・ウィルダース氏が率いる反緊縮政策の自由党ではなかった。得をしたのは、ブリュッセルにより多くの権限を委譲することがオランダの社会モデルを破壊すると考え、同国の第2政党になろうとしている極左社会党だ。

 緊縮政策が比較的穏やかなフィンランドでさえ、反EU感情は、非主流から主流へと変わりつつある。ユーロからの離脱を主張して今年大統領選に出馬した元閣僚のパーヴォ・ヴァイリネン氏は、かつてEU支持派だった中央党の次期党首になろうとしている。

 今後数カ月間で欧州の危機管理能力を最も低下させるのは、緊縮政策に対する反乱ではなく、こうした統合強化に対する反逆だ。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35144

さて置き、まぁ結局のところそういうことではあるのかなぁと。ていうか元々このユーロ危機って「鶏が先か卵が先か」というお話ではあるんですよね。
つまり、本来の目標として『財政同盟』を掲げていた彼らはその為の手段として『ユーロ通貨』を持ち出したのです。その最終目的に至る過程の一つとして。しかしどこをどう間違ったのかその手段の運用さえ怪しくなってしまった彼らは、今度はその『ユーロ通貨』を救う為に『財政同盟』を推し進めようとしている。なんというか見事すぎる手段と目的の逆転現象ではあります。


その財政同盟実現の為の広汎な支持――市民レベルでのヨーロッパはひとつであるという一体感――を得るための手段であったユーロ通貨が危機に陥った時、彼らはこうしてイチかバチかの賭けに出たのでした。(まだ一体感は完成してはいないけれど)他に選択肢はないから仕方がないとばかりに。でもまぁそれも理解はできなくもありません。以前の日記でも書きましたけど、その財政同盟を実現するためのユーロ通貨が失敗するということは、逆説的に、ユーロ通貨の失敗はそのまま財政同盟に失敗に直結してしまうわけだから。
かくして彼らはその悲愴な戦いに挑み、そして見事に「統合強化(財政同盟)なんて冗談じゃねぇ!」という想定通りの有権者の声を頂戴しているのでした。約束された敗北であり、約束された有権者の反乱としか言いようがありませんよね。


そんな人類の壮大な実験の一つである超国家共同体――欧州連合のごたごたについて。やっぱり他人事ならばとても面白いお話だと思ってしまいます。『脱国家』だなんて、人類にはまだ早すぎた夢だったのかなぁと。