そして何よりも危機が足りない

そもそも目指すべきゴールが違うんだからそりゃ手法も対立してしまいますよね、というお話。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35475
何とか時間稼ぎ(ギリシャ再選挙)には成功したものの、でもやっぱり未解決の問題は未解決なままなユーロさんの苦しみについて。

ドイツ連銀は、財政同盟ができるまでは銀行同盟はあり得ないと述べた。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、政治同盟ができるまでは財政同盟はあり得ないと述べた。
そしてフランスのフランソワ・オランド大統領は、銀行同盟ができるまでは政治同盟はあり得ないと述べた。
彼らはあと10日間で、このもつれた結び目を解かなければならない。

 興味深いのは、上記の発言はすべて、ある意味では正しいことだ。だが、オランド大統領のみが現実的な解決策を提示している。危機の解決なくして、政治同盟は存在し得ないのだ。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35475

なかなか面白い三すくみではあるかなぁと。
上記FTさんは「危機の解決なくして、政治同盟は存在し得ない」なんて仰っていて、まぁ確かにその通りではあるんですけど、しかしいつだって直面する危機がなければ改革しようとしないのも私たち人間のサガでもあるわけで。だからこそ彼らにしても延々とこうした欧州連合における根本の問題について『先送り』してきたのでした。
もちろん単純に(国内の)政治的な障害という面もあるんでしょうけども、同時にメルケルさんはこうして千載一遇の機会を狙ってもいるんじゃないかと。その為にユーロの危機を利用している。


しかしまぁこうしたお話を見ていると――何故か一周して――欧州連合における日常の風景に回帰してきたのは皮肉なお話ではありますよね。つまり結局は、統合推進派と反対派の争い、であるのだと。
前者には戦後一貫してドイツが立ち続けていて、しかし後者には古き良きドゴール主義を忘れられないフランスが立っている。こうした現状も、どちらかといえば親EU派だったサルコジさんが選挙で負けてしまった辺り当然の帰結ではあるのかもしれません。かくして彼らは根本的な議論に立ち返る事になる。「もっと統合を進めるべきだ」「いやいやもっとゆっくり進めるべきだ」


その意味で、アメリカの南北戦争にしろウィーン体制後のドイツ統一にしろ、やっぱり「危機なくして政治同盟は存在し得ない」とも言えるわけで。ドイツはこれを梃子にして決定的な改革を狙っていて、しかしフランスなどはあくまでも現状維持を狙っている。そんな欧州連合内部での伝統的綱引きについて。独仏協調関係たるメルコジの関係が終わってしまって見事にそんな構図が復活してしまった。
危機を利用する人と、危機を食い止めようとする人。
ただとにかく今の危機を抑えられればいい人と、二度と危機を起こさない為の結論を求めている人。そりゃ両者はいつまで経っても平行線のままだよなぁと。構図的には火事を目の前にして、水を掛けるか延焼を防ぐ為に周囲を破壊するか、で揉めている感じに近い。