第二次アメリカの宗教離れ

なぜアメリカはあんなに宗教が好きな国なの? なお話。


CNN.co.jp:米国人の宗教心に異変か 「神の存在」疑う若者が急増
ということで「へー」という感じであります。宗教大国アメリカの異変。

報告書によると、「新世紀世代」と呼ばれる30歳以下のグループで「神の存在を疑ったことがない」という設問に「はい」と答えた人は68%で、2007年の83%から大幅に減少。「いいえ」と答えた人は31%と、07年の2倍に上り、10年前の調査開始以来最も高い数字を記録した。こうした変化は若者だけにみられ、他の年代では07年との差が2%以内にとどまっていた。

CNN.co.jp:米国人の宗教心に異変か 「神の存在」疑う若者が急増

とはいえ、このお話でミソなのは「10年前の調査開始以来」という点ですよね。アメリカの宗教離れなんて、それこそ1970年代や1980年代にもかなり大きな流れとしてあったわけで。
だからそもそも現在のアメリカの宗教への傾倒って多分に『揺り戻し』の側面が強いのです。
あの時代に信仰心を失ってしまったことへの反省。行き過ぎた相対主義化への反省。あの時代に生まれた道徳的退廃はやはり信仰が失われたからだったのだ、と。
サンデル先生が言う所の、社会生活を送る人々が根源的に求めるだろう『公共哲学』『道徳』『正義』といったものへの飢えを満たす為に必要だったもの。80年代以降のアメリカ人はそこで「再び」宗教に救いを求めるようになるのです。私たち日本や西欧とは違う道を。宗教――別にキリスト教に限らず――によって日々の生活の安寧と社会の平穏を実現しようと。
共和党保守派の支持基盤がキリスト教保守派であることはよく指摘されますけど、それが確固たる流れとなったのもあの頃なわけです。そこまで古い話ではなくて、レーガン政権以降になってからようやくその傾向が生まれるようになった。そして前回のブッシュ(子)政権の時には一つの頂点を迎えるのでした。まぁ結果としてその反発、政治の舞台に宗教が出てくることの忌避感、という面もやっぱりあるのかもしれません。


かくして再び波が引こうとしている。まぁ30年以上前にもあったんだから、もう一度あっても全然不思議ではありませんよね。
その意味で今回の調査の『30歳以下』と、前回の宗教離れが『30年前にあった』というのは色々示唆的ではあります。やっぱり相関関係があったりするのでしょうか。「新世紀世代」というあの時代を知らない子供たち。そう考えると更に再び揺り戻しが起きても不思議じゃないよなぁと。




まぁ私たち日本人からすると、それでもまだまだ十分にアメリカは宗教的だろう、というのは確かにその通りであります。
しかしむしろ世界的な流れで見れば私たちの方が少数派なわけで。最近の『アラブの春』を見ても解るように、社会が宗教へと回帰しようとする傾向は世界的に見ても顕著なのでした。こうしたアメリカのような『神を信じる』傾向は現代でも尚むしろ多数派でさえあるのです。故に宗教から距離を置こうとするのは日本や西欧のごく一部の少数派のトレンドとさえ言えてしまう。
あなたは神を信じますか?