「戦争のない国には発展もない」のマジレスを考える日記

久々にマジレス日記。


今の日本は平和すぎる。戦争のない国には発展もない:マジキチ速報|2ちゃんねるまとめブログ
彼にとって『戦争』状態と対極にあるのが『萌え文化』と考えている辺りはなんだか微笑ましいとは思います。なぜそれを二者択一にしてしまったんだ。戦争をしたいのか、萌え文化を無くしたいのか、えーいどっちやねんという感じではありますけど。

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/12(火) 07:11:52.27
萌えだのなんだのしらんが、今の腐りきった日本文化を、
祖国のためを思いながら戦死した日本軍が知ったら、どう思うことだろうか。

日本は戦争が終結してまだ67年しか経っていない。
これくらい戦争がなかった期間というのは、歴史を紐解けば普通にあるわけで、
そろそろ日本は憲法を見直し、軍事制度を整え、韓国、北朝鮮、中国等に戦争を仕掛けるべきなのである。
そうすれば萌えだのなんだの言っている痛い連中、文化も消え、HENTAI国家日本などと呼ばれることもなくなる。
戦争なき国に発展もなし。このままでは日本は一生笑いものだ。

今の日本は平和すぎる。戦争のない国には発展もない:マジキチ速報|2ちゃんねるまとめブログ

まぁ実際こういう風に言う人はそれなりに居たりするんですよね。敗戦国たる日本ではかなりタブーな話題とされていますけども、しかし戦勝国たるアメリカやイギリスやロシアなどでは特に。
あの戦争の時代こそが国民全てが団結し、熱狂し、そして文字通り我々は「生きて」いたのだと。その(総力)戦争を現実に経験した人だからこそ、かつてあったある種の異様な空気と熱狂を忘れられない。戦争の時代を懐かしむ人たち。あの時代こそ人生の内でもっとも素晴らしい瞬間だった。昨日の読売新聞の『指導者考』で、チャーチル先生もそんなこと仰っていたなんて書いています。「人生をもう一度生きるならばどの時がいいですか? ――1940年あの年のあらゆる瞬間だ」我らが東京都知事の石原さんなんかもその類なのかもしれません。
まぁこの高校三年生の彼はどう見てもそんな空気をただ何となく憧れだけで語っているだけなので、ぶっちゃけどちらの側からも「お前に何がわかる」と怒られてしまいそうですけど。


ともあれ、本題の『戦争のない国には発展もない』について。
この言葉が全て間違っているのかというと、やっぱりそうでもないわけで。ではそもそも何故――戦争が(結果として)発展を導くのか?
何故かといえば、それは戦争という極限状態が現状の改革を必然的に推し進めることになるからです。平和な状態であれば様々な障害――ただ保守派というだけでなく腐敗や汚職など――によって為されなかったであろう社会の『合理化』が、否応もなく「戦争に勝つために」あるいは「戦争に負けてしまったから」という大義名分を得ることによって進むことになるからです。
一般に『戦争が発展を招く』というのはこうした言説から肯定されます。実際こうした事例は歴史を見れば一杯あるわけで。有名どころでは、ナポレオンの国民皆兵のフランスに負けた周辺国や、クリミア戦争に負けたロシアとか。戦争があるからこそ、皮肉にも、合理化が進むことになった。特に近代国家成立以前までは、こうしたことは極当たり前だと考えられてきました。何故かってそりゃ、絶対王政は絶対に腐敗するから。故に彼らの停滞した社会を無理矢理に改革させるために、彼ら権力者たちの尻に火をつけるために、『戦争』というのはそれなりに役に立ってきたのです。こうして覇権を確立し切った中国やイスラム帝国ではなく、延々と戦争――という名の合理化――を繰り返してきたヨーロッパこそが、結果として勝者となったのでした。
特にその一つの極致である近代国家は、故に「戦争から(近代)国家は生まれる」とまで言われるようになります*1
しかしあまりにも技術進歩と合理化が進んだ結果、今度は戦争による被害があまりにも大きくなってしまった。戦争を無数に繰り返したからこそ、逆にその能力を高め過ぎてしまった。あまりにも戦争が得意になりすぎた私たち。リアル戦闘民族。まぁ当然の帰結ではありますよね。
ならば初めから『戦争』というあまりにも極端な手法に頼らずに、自分たちの手で随時改革を進めていけばいいではないか、実際その通りなのです。だからこそ私たちは常日頃から『競争』を意識させる制度を取り入れることにしました。民主主義や自由主義経済など。いやぁ素晴らしい人類の英知でありますよね。放って置いても停滞しない、戦争を経ずとも自己改革できる社会、それこそが近代以降に私たちが目指してきた社会であったのです。
なので戦争を経ずとも、平和のまま発展を遂げるというのは現代の世界観において、わざわざ敢えて言うまでも無い極当たり前の大前提であるのです。故に最早戦争は必要ないのだと。
ただ、平和なだけじゃなく、平和な上で発展も同時進行できる社会。だから私たち日本の平和主義はその点において、世界からそれなりに支持されているのでした。まぁこうしたことを理解できていないのは、今回ネタにされた彼だけではなくて、絶対平和主義な人の中にも結構居たりするので、彼ばかりをあんまり笑えないんですけど。
ただ発展すればいいというだけでも、ただ平和であればいいというだけでは駄目なんです。いかに両者を両立していくことができるか。


まぁこうしたお話は多分に結果論であります。別に初めからそう意図していたわけではなくて、結果として、そうなっていった。戦争による発展も、戦争によらない発展も、人類の歴史はどちらもそんなものであります。別にどちらも初めからそこを目指していた訳ではなくて、結果として戦争をしたら発展していったし、結果として戦争を避けながらも発展する方法を編み出した。人生その場しのぎでなんとかなるものであります。
なので無邪気に「戦争のない国には発展もない」なんて言い切ってしまうのは、まぁなんというか、結論しか見ていないんじゃないかと思ってしまいます。魚を切り身しか見た事がない子供が、海でもそんな風に切り身のまま泳いでいるんじゃないか、と信じている構図を見ている感じに近い。



ともあれ、まぁまだ18歳のようですし、これから大学に入ってきちんと勉強をしていただければ立派な大人になれるのではないのでしょうか。今のままじゃデマゴーグにすらなれません。とりあえず上記リンク先でも言及されているように、まずは先行研究たる近代思想家たちから。こうしたことを語る時「世界史の偏差値は70を超えているわけだが」とか素で言ってしまう辺りアレですけども、まぁ若気の至りということでひとつ。ていうか釣りじゃないのかと疑ってしまうレベルです。
しかし僕もそこまで偉そうなことはまったく言えないので、彼が僕のように中二病を斜め上の方にこじらせないことを祈っております。