だってホントのことを言うと怒られるから

「耳目を集められて」且つ「証明されてない論拠」の有用性。


小6女児監禁男はプリキュア好き - 社会ニュース : nikkansports.com
“女児”への犯罪が多発するワケ…玩具扱いしてイタズラ - 政治・社会 - ZAKZAK
へー犯人はプリキュア好きですって。プリキュア好きが犯罪者なのか、犯罪者がプリキュア好きなのか。
わざわざその「アニメ好き」といった属性をタイトルに持ち出すのはやっぱり今に始まったことではなくて、だから毎回毎回バカなことを言っているなぁとは思いますけども、それってまぁ逆説的に「よく解っていない」からこそ適当なことを言える、ということでもあるんですよね。厳密には証明されていないからこそ、間違ったことを幾らでも言えるし、そして同時に真実ではないからこそ逃げ道が用意され表向きは「傷つく人」が出ない、ということでもあるのだと。
その意味でこうした「犯人はアニメを見ていた」とか「犯人はゲームに熱中していた」とかはものすごく彼ら報道側の人びとにとって、使い勝手がいいのだろうなぁと。だってそれをやるだけで多くの人の耳目――同意と反発を集める事ができるし、その上更に公開処刑やサンドバッグにしても強い文句がつけられないから。現代版アウトカーストやえたひにんとなっているオタクたち、というのもいい加減使い古されたお話ではありますけど。
まぁそうした傾向も時代の変化によって徐々に変わって来てはいるんでしょう。


ただまぁ個人的なポジションとしては、ポジティブかネガティブかはさて置くとして、将来的な影響はやっぱりあるのだと思います。問題は、それが良いか悪いかどちらに転ぶのか解らない所が致命的で、そんなもん解ったら誰も苦労しません。ほとんどの場合において、それを切り分ける事が難しいというのに、アニメやゲームのそれを簡単に断罪できる人は……まぁポジショントークか確信犯かともかくとして結構どこにでも居るので一々腹を立てるのもどうかなぁと。
世の中には、宗教や教育や家族や政府や科学等々にも、それによって「人間は堕落する!」と確信している人は少なくないわけだし。いわんやアニメやゲームをや。

 精神科医の日向野春総氏は「その場で衝動的に性的暴行せず、連れ去ろうとするのは女児をモノのように扱っている。彼らが女児に向ける視線は生身の人間に対するものではなく、玩具やペットに向けられるようなものに近い。こうした思考が形成されるのは、(幼少時からの)成育過程などが密接に関係している」と解説する。

“女児”への犯罪が多発するワケ…玩具扱いしてイタズラ - 政治・社会 - ZAKZAK

ともあれ「(幼少時からの)成育過程などが密接に関係している」こうした事実はそれなりに正しいとも思うんですよね。だって実際に、例えば幼児期に虐待や育児放棄や両親の離婚を経験した児童は将来的に犯罪率が高くなる、というのはまぁ欧米ではかなり研究されて(概ね)証明されてもいるわけです。
しかしながら、だからといってそんな風に真っ当に研究によって「(概ね)関連性がある」と証明されたことをそのまま書くわけにもいきませんよね。だって、それは文字通り「ホント」のことであり、つまりその言説によって被害を被る人が確実に発生し、そして同時に強い反発も招いてしまうから。
例えば犯罪者のそれが報道されたときに、「犯人は幼児期に虐待されていた」とか「両親に離婚歴があった」そして「だから犯罪が起きたのだ」、なんてことまさか書けるわけがない。そうした二つの環境要因は将来の犯罪率に関連性があると証明されているにもかかわらず、しかしだからといってそれをそのまんま書くわけにはいかないのは簡単に想像できます。ほんとうのことだからこそ、むしろ大っぴらに書けない。あるいは当たり前だからこそ、インパクトに欠けてしまう。
その意味で、こうしたアニメやマンガやゲームの悪影響について将来的に「悪影響アリ」と出るのか「悪影響ナシ」と出るのかは僕なんかにはさっぱり解りませんけども、しかし、どちらにしてもそうした研究の積み重ね――一体それをどうやって研究していくのかという問題もありますけど――はまだまだこれからだと思うのでしばらくはこうした無責任な言説に私たちは付き合っていかなくてはいけないんだろうなぁと。
「どっちか解らない」からこそ適当なことを言える人たち。それは確かにどう見ても無責任な態度ですけども、しかしやっぱり有用性があるからこそ用いられるのでしょう。


さて置き、逃げ道を用意しつつ反撃してこないサンドバッグを殴って耳目を集める彼ら、とやると途端にクズっぽいお話になるのでステキですよね。そして子供は大人の背中を見て育つ。これはまだ証明されていないから。これはまだイジメじゃないから。
いやぁこの社会は素晴らしいなぁ。