先ず内部分裂より始めよ

二極化の一歩手前で苦悩する人たち。


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ということでオバマさんの肝いりで「イスラエル」と「神」が追加されたそうで。しかし何でよりによって全国党大会中に変更する羽目になっているんだ、という感じではあります。こんなことならはじめからそう書いておけば良かったのにね。土壇場で変えようとしたものだから余計に問題が大きくなっているんじゃないのかと。ザ・泥縄。
ともあれ、まぁ前者の「エルサレムイスラエルの首都」というのは仕方ないことなのかなぁと同情はできます。イスラエルロビーこわい。マネーイズパワー。特に大事な選挙前のこの時期においてそうした人々を敵に回して余計な苦労は背負い込みたくなかったんだろうなぁという当然の帰結クリントンさんでさえ任期中のほとんどはそうしたポジションだったわけだし仕方ないよね。ちなみに、前回のブッシュさんはどちらかといえばそうした所から距離を置いていた方だったんですけども、彼もまた9・11後の激動に流されて以下略。

神に言及する文言を再び綱領に盛り込むことも承認されている。そうした文言がないことも、保守派の活動家が綱領を攻撃する材料となっていた。

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で、個人的にはやっぱりこっちの方が気になるかなぁと。かつての、特に70〜80年代辺りまでの民主党と言えばそうした「宗教離れ」なポジションだったわけですけども、しかしやっぱり彼らも民主党共和党の両方で進んだ中道化の流れの中で、公的に『信仰』への言及を増していったわけであります。
ところが今回は――結局修正されたとはいえ――『神』について「言及されなかったこと」が批判されていたと。なんというか民主党内の苦悩というか分裂が窺えるお話でありますよね。
オバマさんの成功体験に支配される共和党 - maukitiの日記
先日の日記で共和党の苦悩を書きましたけども、やっぱりそれと同様で、そもそも彼らはまず自分の党内において二極化に直面している。中道や穏健と称される人たちと一方で過激な方へ走る人びと。それはそれぞれ両党の対立から始まるわけではなくて、むしろ内部の対立から始まっているのだと。本来であれば、事実上のお祭りというか決起集会というか打ち入りのようなモノだったにもかかわらず、彼らはその内部分裂を隠しきれていない。だから共和党はブッシュさん時代を封印しなくてはならなかったし、一方で民主党はこうしてその政策綱領をめぐって騒動が起きてしまっている。
事実上「教会に行かない人の為の党」になりつつある民主党*1について。オバマさんの自業自得というか、あるいは成果といえばその通りなんですよね。同性愛の結婚支持だとか、中絶の容認だとか。見事にそうした人たちを引きつけている、というのは確かにその通りであります。まぁもちろん本気でそれをやりたければそれでも構わないんですけども、しかしやっぱりアメリカでは頻繁に「教会へ通う」人たちは少なくないわけで。選挙戦略上、そうした人たちを本気で切り捨てる覚悟があるか否か。
で、前者のエルサレムと同様に、後者も(周囲の人間はともかくとしても)選挙戦に苦しむオバマさんにはやっぱりそこまでの覚悟はなかったと。この辺りは、普段の言動とは裏腹に、現実主義というか腰の軽いオバマさんらしいお話ではありますよね。やっぱりそれは泥縄的だと言ってしまえばその通りなんですけど。


社会的・文化的に二極化するアメリカ。やっぱりそれはいきなり民主党共和党の二極化によって急に出現するわけではなくて、お互いに今はまだその『純化』という段階なのかなぁと。今後それが進むのかあるいは後退するのかは解りませんけども、選挙の結果が方向性を決めるのは間違いないのでしょう。まさに前回のオバマさんの勝利が示して見せたように。
がんばれアメリカ。