『偉大な大統領』に振り回される人びと

ようやく9・11から立ち直り、そして再びそれ以前からのトレンドであった「引き篭もり」へと回帰しようとするアメリカさんち。立ち直った感ゼロ。


CNN.co.jp : 今年の地政学上の重大事は「日中対立」 米専門家が見通し
ということでいつのまにか「世界でも最もホットな危機」の一つとして数えられるようになってしまった日中間の摩擦であります。毎年恒例のユーラシアグループによる「世界十大リスク」でも、その十個の内で日中関連の問題だけで順位を三つも占めてしまいましたし。ただでさえアレな中国さんちと一番ヤバいことになりそうなのが私たち日本だろう、という予測には当事者ながらそれなりに頷くしかないわけでもありますが。最早東アジアのパワーバランスは元には戻らない。


そうなるとどうしても日本が気にせざるをえないのが、あのアメリカさんちのご意向でもあるわけです。先日の安倍さんのダイアモンド構想もそれはそれで大変意欲的で素晴らしいものだとは思いますが、しかし結局はまぁどこまでいってもアメリカ頼り――日米同盟を機軸とした構想でもあるんですよね。最終的にはそこに頼るしかない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36988
――で、肝心な二期目のオバマさんの気持ちは何処へ向かっているのかというと、これもまた結構怪しいモノになってしまっているんじゃないかというお話が言われていると。あのブッシュさんのようにバカみたいに行動しまくられても困りますけれども、しかしだからといってあまりにも急に「手を引き過ぎても」同盟国たる私たちも困ってしまうわけで。


偶に、よくわからないけどとりあえず反米な人たちが「アメリカが居なくなれば世界が平和になる」的なとても希望に満ち溢れたことを仰っていたりしますけども、まぁそれはそれで一つの信念としてアリなのでしょう。実際、彼らアメリカが動いたからこそ余計に生まれた悲劇というのはやっぱり存在しているわけだし。
しかしその一方で、歴史を振り返ると「アメリカが手を引いたからこそロクでもない結末に至ってしまった」という事例もやっぱり見つけることができるんですよね。最も代表的なのが第一次大戦後にアメリカの引き篭もりが招いた惨禍であるし、そして冷戦後の世界でも、あのユーゴスラビアがあそこまで『手遅れ』になってから介入が始まったのも結局はアメリカが最後まで動くのを嫌がっていたからこそあんなことになってしまったわけで。ただ、それさえも他の事例――ルワンダ東ティモールスーダンシエラレオネ――に比べればまだマシとさえ言えて、結局、最初から最後まで国際社会=アメリカが動こうとしなかったせいで、見捨てられた数万〜数十万の人間がただ死んでいったという事実もやっぱり存在している。
現状の(無視され続けている)シリアの例もそうですが、正直その辺りのことを考えると個人的にはそう簡単に「アメリカが居なくなればいい」なんてことは言えないよなぁと。


なのでまぁ上記で書いたように、特にクリントンさん時代からの「やる気のないアメリカ」というのはずっと言われ懸念され続けてきたお話でもあるんです。それこそアメリカの長期的な規定路線として。超大国たるアメリカのおわり。かくしてアメリカはそのうちモンロー主義に回帰するのではないかうんぬんかんぬん。
よく誤解されているお話ではあるんですが、あの前米国大統領たるブッシュさんにしても元々の政策としては「世界から手を引く」方向にあったのです。世界中に米軍を展開させるなんて金の無駄だからやめるべきだ、なんて。今ではすっかり影の薄くなってしまった共和党穏健派らしい大統領だった。ところがどっかのバカが飛行機をビルに突っ込ませて以下略。
実際、あの『9・11』直後から既に「アメリカはこの復讐を完遂させた後、第一次大戦の後と同じように世界への興味を無くし、再び引き篭もるのではないか」なんて懸念は言われていたのです。

 米国が以前ほど介入しなくなれば、その影響は世界の国々にとって劇的なものになり得る。ブッシュ政権時代には、欧州の指導者たちは米国の実力行使について文句ばかり言っていた。だが皮肉なことに現在では正反対の問題に頭を悩ましている。つまり、米国が様子見を決め込んで、問題が悪化するに任せるということだ。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36988

そして私たちはそうした懸念を再び抱くようになっている。あのブッシュさんのハタ迷惑な『単独行動主義』と同等か、もしかしたらずっと大問題となるかもしれない、より致命的な変化をもたらしつつあるのだと。少なくともその「急激な変化」に対応できるような準備なんて、私たち日本を含めて、どこの国にもない。


当初オバマ政権はそうした点からも懸念されていましたけども、まぁ蓋を開けてみるとその外交政策は「思ったより」現実的で多くの国は安心していたわけですよね。ところがどっこい二期目に入り恒例のパターンである『偉大な大統領』をまさかの国内政策において目指そうとしている彼。まぁそれはある意味では、確かに時代の流れに適ったお話ではあるのでしょう。
ただ悲しいことに、どちらにしても犠牲となるのはその他の国々という点で大して違いがないのが救えないお話ですよね。
眩しすぎたオバマさんに落ちる深い影 - maukitiの日記
先日の日記でも少し書きましたけども、大統領選に見事に勝利したことで、その威信と名声を取り戻そうと典型的なリベラルな方向へと更に舵を切ったオバマさん。そして相変わらず共和党からのケンカを買い捲る気マンマンであります。


ほんともう何でこの人たち毎度毎度極端から極端に振れてしまうんでしょうね。
いやまぁうちの国も似たようなことを思われているのかもしれませんので、お互い様なのかもしれませんが。