無慈悲で魅力的な市場競争原理

この世で最も強力な弱肉強食な論理の一つ。其は効率的か否か。



http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38783
ということで、そのポジションに忠実な形でエコノミストさんがドヤ顔で披露する「国営企業はまた死んだ!」論であります。

 国営企業は再び、敬遠されている。それこそが本来あるべき姿だ。馴れ合いの国家資本主義の欠点は消えてなくなることはなかった。ペトロチャイナの元経営者は現在、恐らくは収賄容疑で取り調べを受けている。ピーターソン国際経済研究所によれば、ガスプロム汚職と経営の非効率によって年間400億ドルを無駄にしているという。

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 ペトロブラスは外部株主に取締役の任命権を与えることで、ごく小さな一歩を踏み出した。一方、中国は時折、産業界の控えめな改革について口にしている。だが、投資家と政治家の双方に恩義を受けている企業のハイブリッドモデルは、カール・マルクスが資本主義について語ったのと同じくらい矛盾に満ちている。こうした緊張を解消する最善の方法は、民営化だ。

 ビジネスマンは今、少なくとも、以前ほどは国営企業に圧倒されずに済む。標準的なポップスターのキャリアより長く存続するためには、企業はイノベーションの文化と財務の規律を必要とし、次第に世界的な事業展開も求められるようになっている。これは、ごく一握りの経営者にしか実現できないことであり、それを成し遂げられる政府は存在しない。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38783

まぁこの辺は私たち日本人にも感情的な形で少なからずある「国営企業嫌い」の実感とそこまで乖離していない結果ではないでしょうか。
つまり、国営企業は、民間企業のそれと比べて――当然国家による資本の保証があるという強みはあるものの――明らかに経営能力が欠如する傾向にある。ただ一方で、かなり長期的な投資が必要とされる資源開発などは、従来から国営企業が有利にあるとされてもきたんですよね。リンク先でも言及されているような、新興国の国営資源企業までもが下がり続けているのは、個人的には結構意外なお話だなぁと。


現代企業は常に効率化とイノベーションをし続けなければ生き残れない。単純な「規模の経済」こそが絶対の競争力の要であった20世紀前半までの時代とはまったく違う現代という世界に生きる企業たち。だからこそ、その大きさと歴史の古さだけで勝負してきたような、愚鈍な大企業が次々と淘汰されていくのは必然の帰結でありました。
そんな時代の変化を見て「我が国の企業はなんて弱いんだ」と嘆く人々。しかしこの辺の構図は日本というだけでなくて、アメリカにもヨーロッパにもあるほとんど世界共通のお話なんですよね。ただそれも、グローバル化に対応した多国籍に活躍する企業であればあるほど「その国の企業である」という性格は薄れてもいくわけで。だから、弱い自国企業ばかりが目立つ、というのはある意味では当然なんですよ。強い企業はグローバルな世界に出ていき、そうでない企業はローカルな自国市場で生きていくしかない。日本は幸か不幸か、世界でも有数の大きな市場を国内にもっているので、それでもまぁなんとかやっていけますけども。




ともあれ、これまでの日記でも何度か触れてきた、現代企業たちが戦うそれはもう血も涙もない市場競争について。だからこそ、そこでは非効率な国営企業は排除されていくし、より企業たちは違法ギリギリのグレーゾーンまで攻めることで手段を選ばなくなっていくし、そして成功したグローバルな企業ほど地元住民の重要性は相対的に下がっていく。
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そんな熾烈な競争の結果、果てしなく下がり続ける商品やサービスの価格。最早現代企業には価格を一方的につり上げる能力などない。そりゃ成熟した市場では放っておけば嫌でもデフレになるのは当然ですよね。だからこそ現代国家ではインフレ政策がより重要とされ云々なんですけども、その辺のお話は割愛。
国営企業を排除し、そんな競争の結果に喜ぶ消費者たち。でもやっぱりそれは、労働者たる私たちの犠牲の上に成り立つ成果でもあるわけで。


私たちは国営企業が失墜することを喜ぶ一方で、しかしそれを排除した市場競争に勝つ為の生け贄にされているのが、私たち労働者であることを解っていない。世界市場での企業の成功が、やがて自国からも自由になっていくことを理解していない。商品価格の下落が、自らの賃金の低下と紙一重にあることを見て見ぬフリをつづけている。


グローバルな世界で行われる市場競争ってとっても無慈悲で、でも素晴らしいなぁ。