「貧しさ」という致命的なストレス

貧すれば鈍する私たち。


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貧困が人の知力を鈍らせる、研究 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
まぁ昔から言われてきたことが「やっぱり正しかった」というお話ではあります。

 サイエンス誌に先頃発表された論文によれば、家計に不安を抱えていると、認知能力が大きく低下するという。研究では米ニュージャージー州のショッピングモールに来る低所得者層と、世界平均で見た貧困層に当たるインドのタミルナド州の農民からデータを集めた。するといずれの調査からも、家計のやりくりを考えるだけで認知能力が低下することが分かった。

 アメリカの調査では、車を修理する人をテストした。すると高所得者や少額の修理で済む低所得者に比べ、多額の負担を強いられた低所得者の認知能力が低かった。

 インドでは、サトウキビを収穫する前と後で農民の認知能力を測った。すると、収穫を終えて金が入ってくることが分かっているときのほうが収穫前よりも認知テストの成績が高かった。

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『貧困』がもたらすストレスや精神的圧迫について。
もちろん一部には「彼らは貧困だから無能なのだ」ではなくて、「無能だから貧困なのだ」というマッチョ全開な人もいらっしゃるでしょうけども、しかしやっぱり個人的には前者のほうだよなぁと。
もちろん『貧困』が当人のモチベーションを高める、という要素だってあることは間違いないでしょう。適度なストレスや危機感が能力の発揮を助ける。ただそれも程度問題なわけで。その効用は結局のところ最適点が存在し、そこを越えると精神的な動揺と疲弊によってマイナスにしかならない。ストレスがパフォーマンスに影響を与えるのならば、現代世界においては最も大きなストレスの一種であろう『貧困』は確実に当人の能力を良くない方向へと誘導する。最近ではかなり一般的に語られるようになった、教育に関する環境要因ってこういう面も大きかったりするのでしょう。


単純な『IQ』のような指標ではなくて『認知能力』という面が注目されたのが今回の研究で見るべきところなのかなぁと。

 だが、助けが必要なのは大人も同じだ。子供と違い、大人が貧しいのは本人の問題とされがちだ。そのため貧しい大人は、金の使い道をきちんと判断できる人と見なされないことが多い。

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特にこの場合の認知能力というのは、現状認識の適切さ、という意味でもあったりするわけで。つまり、スタート地点であるそこをきちんと把握できない限り、目指すべきゴール地点の位置も把握できない。
現状の正しい認識と目指すべき理想のギャップを如何にして埋め、そして両者を妥協させるか、という程度の能力。




しばしば批判される「ギャンブルで全部すっちまうんだろ」「なんでそんな無駄な買い物をしているんだ」的な構造は、まぁもちろん少なくない面で真実であったりするのでしょうけども、しかしその背景にはやはり『貧困』という強烈なストレスの逃避行動という面もあったりするのだろうなぁと。
そしてこの現代世界において、その受けるストレスはおそらく過去の世界よりもずっと大きなモノとなっている。かくしてそれは逃れられない負の連鎖へ。


いやぁおっそろしいお話ですよね。