「だが、今この瞬間は、力こそが全てだ」

「私を越えてみろ」byロシア


クリミアの空港を武装集団が占拠、空の便は通常運航 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
ということでロシアさんちらしき「なぞのぶそうしゅうだん」がこれ見よがしにパワーをみせつけているそうで。
米大統領、ロシアの介入をけん制―ウクライナ情勢 - WSJ.com
一方で口は出せても手は出せないという事実を、つまり足元を見られまくっている、国際社会=欧米の皆さんたち。前回シリアでもレッドライン詐欺をやってしまったわけだし。


まぁこの辺は散々『アラブの春』関連の日記でも書いてきたお話ではありますが、あの一連のお祭り騒ぎであるチュニジアにしろリビアにしろエジプトにしろ、結局は勝利の方程式となったのは軍事的優位――国内にせよ国外にせよ強力な軍隊の支持――を得ることに成功したところが勝ったわけですよね。逆にシリアはその軍事バランスがまぁ危うい所で均衡してしまったために、果てしない血みどろの戦いに突入する羽目になってしまった。
――翻ってウクライナさんちはどうなのか?
もし仮に、それこそウクライナ国軍が完全に西側陣営に立つとなると「国家分裂」という地平も見えてくるでしょうけど、ただ現在の軍の皆さんといえば、賢明にもこうした騒乱から距離を置いている。そしてそもそもそんなウクライナ国軍といえば、せいぜい20年前にはソ連軍そのものでもあったわけで。ここでロシアと一戦交える気持ちが僅かでもあるのかというと、やっぱりそれもないでしょう。どう見ても混乱の起きようのない、安定的な軍事バランス。そんな直近の事例としての『アラブの春』から現在のウクライナの情勢を見れば、おそらく今回のウクライナさんちもロシアさんペースで、一応は平穏な物事は進んでいくのでしょう。少なくとも国軍が動かざるを得なくなるほどの大混乱を、例の過激な反体制派の皆さんが起こしさえしなければ。
こうして見ると、ヤヌコビッチさんが決定的な混乱=治安維持目的の国軍投入というリスクを冒す前にあっさりと首都を逃げ出してくれたのは、ぶっちゃけウクライナという国家の将来にとって実はかなり幸運な決断だったのかなぁと思ったりします。あるいは、そうした要請を拒否されたからこそ逃げ出したのかもしれませんが。ただ少なくともそれをしなかったおかげで、決定的な混乱を避けることはできた。
【ウクライナ情勢】飛行機? 巡洋艦? ヤヌコビッチ氏、どう露に入ったか - MSN産経ニュース
この辺はロシアさんちの意向もやっぱりあったのでしょう。プーチンさんの外交の上手さというかなんというか。現状のような展開でさえあれば、ロシアは軍事力を「誇示」するだけで優位に立つことができているわけだし。ウクライナの臨時政府のメンツを潰さないように、敢えて彼らは『謎の民兵』という体をとっているのでしょうね。親欧米派な彼らの面目も立てようとする辺り、現在のロシアさんちの余裕っぷりが窺えるお話であります。今後もこうした示威行為は続いていくのだろうなぁと。





http://www.riabou.net/archives/555
ともあれ、この辺りの、21世紀も今尚国際関係を支配する身も蓋もない構造については、『リアリズムと防衛を学ぶ』さんちで簡潔に述べられている通りで、

ただ、昔は露骨にやっていたのを、今は表面上をとりつくろってやるだけです。それはそれで偉大な進歩とはいえ、いっこうに戦争はなくならないし、国家は武力を用いて自国の利益をはかることを止めません。なぜなら、武力の行使にかわる解決手段がこの世に出現していないからです。

ハンナ・アーレントが書いているように「今日まで戦争が残っている主な理由は人類の内心の死への志向でもなく、抑制しがたい攻撃本能でもなく、……ただただ国家間の最終裁決者として戦争の代わりになるものが未だに政治の舞台に現れないという事実」(暴力について 1973 p95)によります。だから名目を取り繕いつつ、帝国主義の時代のように、国益を守るために時として軍事力が使われます。

http://www.riabou.net/archives/555

まぁこれが悲しい現実世界ではありますよね。肝心要の国連でさえシリアではあのザマなわけで。今回は最早国連を動かそうとすらしない。シリアの時でさえ動かせなかったのに、ウクライナで動かせるなんてまぁ考えるだけ無駄ですよね。
いやぁこくれんってすばらしいなぁ。