あんな時代もあったねと

あれを「ブラック」と言える幸せな私たち。


ちきりん「富岡製糸場って“元祖ブラック企業”じゃん」 - Togetter
わー(いつものことながら)たのしそうで何よりであります。

富岡製糸場って「元祖ブラック企業」じゃん。それが世界遺産になるってことに、ブラック企業撲滅運動系のみなさんは、どんなご意見をお持ちなのかな。やっぱり「絶対反対!」」運動を始めるのかな?

ちきりん「富岡製糸場って“元祖ブラック企業”じゃん」 - Togetter

ともあれ、まぁ二重の意味でアレなことを仰っているよなぁと。一点はリンク先で散々指摘されているように、富岡製糸場は「日本で最初の」というだけあって名実ともに国家にとっての旗艦工場であった以上、そこまで無茶なことをやるはずがなかったわけで。そしてついでに言えば、じゃあそうではなかった(それこそ野麦峠のような)それ以外の劣悪環境下にあった工場の『存在自体』が悪いのかというと全然ない。というかむしろそれは概ね福音ですらあった。
確かにあの時代の日本がやっていたこと、そしてそれは現在でも貧しさから抜け出そうと必死に国家の近代化を図る国々がやっていることは、まぁ端的にいってロクでもないことであります。低賃金で選択の余地のない労働者たちを劣悪な環境下で長時間縛り付ける。
――ただ、それでも、原因と結果を混同してはいけないんですよ。
搾取する工場そのものが原因であり結果として当時の苦境にあえぐ労働者たちがあったわけではなくて、そもそも当時の人びとに選択肢そのものがなかったことが根本的な原因わけで。教育やあるいは市場の問題から、当時の日本や現代の貧困国たちが抱えていた根本的原因というのはそうした工場以外に職場を提供できないことだったのです。
故にあの時代にあってその労働者たち――しかも女性たちの働き場所を提供した、という点でこそそれはむしろポジティブな評価をされるべきなんですよ。そこで人々に初めて「働く」という選択肢が生まれた。


個人的に今回の世界遺産登録のニュースで思うのは、私たち日本人自身がどう考えているかはともかくとして、世界における非欧米な日本が先進国入りした近代化への最初の一歩であり象徴、という事実もやっぱり大きいんじゃないかと思うんですよね。
『近代化遺産』あるいは『産業遺産』という名前の下にふさわしいもの。
それをブラック企業負の遺産というのは、そうした経緯を無視していて、どうしても生暖かい気持ちになってしまうよなぁと。