『失われた世代』という負の遺産

独裁者の失敗例の一つの極北。


痛いニュース(ノ∀`) : 【画像】 ルーマニアに存在する地下都市が凄いと話題に 「住人全員HIV保持者」「ドラッグが食事」 - ライブドアブログ
うわーまだ21世紀14年目だけどオメガ世紀末。知識として漠然とは知ってはいたものの、やっぱりまだ現在進行形なんですねぇ。
まぁあの辺のカオスっぷりは、それこそ根強い欧州連合懐疑の遠因として語られるほどでもあるわけで。東欧からロクでなしどもが自分の国に流れ込むなんて許せない、なんて。それが実際に脅威になるかどうかはともかくとして、しかしこの写真を見て恐怖(及び憎悪)の感情を呼び起こされること自体はやっぱり否定できないのでしょう。

英デイリーメールが、ブカレストの地下ジャンキーエリアを記事にしている。ここは、広大な地下構で、何百人ものジャンキーが住む。すべてがHIV保持者で、4分の1が結核持ちだという。

この悲惨な状況のはじまりは、あのチャウチェスクの時代にある。彼は大統領時代、「子供を4人生む」という政策を行ったが、当時のルーマニアは、自国農産物を輸出ばかりする政策によって、自国民が飢えていた。そのため、子供たちは捨てられ、ストリートや施設に集まる。彼らは、「チャウチェスクの子供たち」と呼ばれた。

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チャウシェスクというバカな独裁者による負の遺産。1966年から89年までの人口増加を狙った妊娠奨励及び中絶禁止政策。その自然増のペースを無視したバカげた人為的強制的なやり方によって各家庭の許容量を超えた「子供たち」を抱えた社会は、まぁ当然の帰結として抱えきれないそれを捨て、無いものとして扱うしかなかった。



「産まれるはずではなかった命」なんて言うと悲劇っぽくまた少しロマンチックではありますけども、もちろんそうした家庭事情というのは必ずしも不幸な結果に終わるわけではない。
――ただ身も蓋もなくほとんどの場合では、そうした家庭に産まれた子供は悲惨な人生を生きることになってしまうんですよね。まさに社会から見捨てられた彼らの多くは公的にも私的にも何の支援も受けられなかった故に、当然の帰結として、まったくの別世界を造り上げることになった。
おおよそ通常の現代社会からは考えられないような地下世界を。
1989年まで続いた、と改めて考えると結構最近のお話。最後の世代を考えると現在25歳前後。やっぱりこれは過去の話ではなく現在も続いており、むしろこれからようやく徐々にピークアウトしていくのでしょう。それも急激な変化というわけではなく、まさに人間が少しずつ老いていくように、少しずつ縮小しながらも世代交代を重ねることで再生産されていく。


本人の責任ではまったくなく不運としか言いようのない出来事によって教育といった社会からの支援を受けられず「失われた世代」とされる人びと。その帰結について、今回のルーマニアの例はとてもよく象徴するお話だよなぁと。
そしてこうした劇的な世代丸ごとの損失というのは、中絶禁止だけではなく他にも要因はあったりする。それこそ有名なのは、イラクやシリアで起きているような破滅的な戦争や内戦によって若い人たち居なくなっちゃう、あるいはインフラの破壊によって教育をまったく受けられない世代が誕生する。そんな一世代丸ごと巻き込むような大きな負の遺産というのは、こうしてその後何十年も後を引くことになる。それは戦争だろうが、人口増加政策だろうが変わらない。



いやぁおっそろしいお話ですよね。