アサドは二度勝つ

ハーフェズからバッシャールへ。



シリア大統領選、アサド氏が再選 反体制派「茶番」と非難 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News
そういえばシリアの「選挙(笑)」も終わったそうで。うん、まぁ、こんな状況になっても尚「選挙やっておけばいいんだろ感」を貫くというのは別の意味で感心してしまうお話ではあります。いやまぁやっぱりそれもこのシリアに限った話ではなく、エジプトもほとんど同じだし、あるいは類似例としてはウクライナでも似たようなモノなわけだし。そういえば北朝鮮人民「共和」国も選挙やってるんでしたっけね。以前の日記でも書きましたけど、私たちが愛する民主主義=共和制というのが、ほとんどそのまま独裁者たちの大義名分に援用されているという愉快な世界。
あともうひとつ、やや蛇足的なお話ではありますが、、このリンク先にある写真に出てくるアスマ夫人をはじめとする女性たちの多くがヒジャブを被ってない、というのもまたこのシリア内戦をめぐって欧米リベラルな人たちの立ち位置に困ってしまうお話ではあるかなぁと改めて思ったり。


【6月5日 AFP】3日に投開票が行われたシリア大統領選挙で、現職のバッシャール・アサドBashar al-Assad)大統領が88.7%の票を獲得し、再選を決めた。現大統領の当選は当初から確実視されており、アサド政権の転覆を狙う反体制派は、同選挙を「茶番」と非難している。

シリア大統領選、アサド氏が再選 反体制派「茶番」と非難 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News

ともあれ、まぁ結局の所この限りなく茶番でもある「選挙」の意味というのは、やはり事実上のアサドさんの勝利宣言でもあるのでしょう。一時彼は劣勢に立たされたものの、しかし彼は父親から受け継がれた「独裁者」としての覚悟を忘れなかった。


実際、父親であるハーフェズさんもクーデター当初は危うい立場にあったのです。1980年代当時も今を彷彿とさせるような国内のスンニ派ムスリム同胞団はアサド政権に対してテロ闘争を仕掛けていて、そんな彼らの挑戦に父アサドは徹底的な殲滅戦術で対抗していたわけであります。敵は全てぶっ殺す。サーチアンドデストロイ。現在でも激戦地の一つとなっているハマにおいて1982年に彼は(歴史的遺産でもある)町ごと破壊し、2万人を虐殺した。そんな徹底的なやり方で、父アサドはシリア国内における一大勢力であったムスリム同胞団をほぼ完全に駆逐し、中東で最も強固な独裁体制を確立したのです。そして彼は政権を維持したまま概ね平穏な内に天寿を全うした。
そして後継者であるバッシャール=子アサドは、そんな父と同じやり方で、同じく勝利を収めつつある。
ほんとうに悲劇的なお話ではありますが、この親子二代ハーフェズとバッシャールというアサドさん家のやり方というのは、ある種の独裁者の勝利の法則でもあるんですよね。身内で軍事力を独占し、一度刃向かった敵は妥協せずに徹底的に殲滅する。シンプルではありますが、いざ実践となるとなかなか難しい、古今東西権力維持の普遍の真理であります。


つまり、アサドは「再び」勝者となりつつある。
まぁ結果論を言ってしまえば、何で同じことを繰り返してしまったのかなぁと言えてしまうんですけど。ただ死体を積み上げただけ。


もちろんだからといってアサドさんのやり方を擁護できるわけでは絶対にない。しかし、それでも、一方でこの騒乱を煽った人たちの無責任さにも呆れてしまうお話。
シリア内戦の死者16万人超える 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
父アサドさん時代にはできなかったことが、子アサドさん時代には達成できるだろうなんて無邪気に確信した結果が、現状で16万人が死に、その上アサドさんも排除できなかったっていうシリア内戦の現状ですよ。『アラブの春』とか無邪気に謡いながらデモに赴いた彼らは、相手の覚悟が解っていなかった。
いやぁ今更ながらクソみたいなお話ですよね。ただただ死体を積み上げだけ。
http://www.huffingtonpost.jp/yusuke-iguchi/momotaro_b_5432825.html
でもまぁ16万人(その内三分の一が民間人)が死んでも尚、武力介入に懸念したキャッチコピーを持ち上げる私たちも心底ハラショーなお話ではありますけどね。

【5月20日 AFP】英国を拠点とする非政府組織(NGO)のシリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)は19日、2011年3月に始まったシリア内戦による死者が16万2000人を超えたと発表した。

 シリア国内のネットワークから情報を得ている同組織の最新の集計結果によると、これまでに判明した死者数は16万2402人。うち民間人は子ども8607人を含む5万3978人。反体制派戦闘員の死者は4万2701人。

シリア内戦の死者16万人超える 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

山粼氏がこのような視点でこのコピーを考案したきっかけは、シリア内戦に対するアメリカの軍事介入問題だったのだという。「内戦状態で混乱するシリアに介入しようとするアメリカは、世界にとって"正義"であると世の中は思っていたのかもしれない。しかし、限られた情報の中で、ものごとを一方的に決めつけてしまうことが本当に正しいのか。それを桃太郎の話に重ね合わせて世に問いたかった」と山粼氏は語る。

http://www.huffingtonpost.jp/yusuke-iguchi/momotaro_b_5432825.html


アメリカにやる気がなくて良かったのか、それとも悪かったのか。ポジションの問題と言ってしまってはそれまでではありますけど。
みなさんはいかがお考えでしょうか?