そして最後にパンドラの箱に残るは悲しき希望

このままユーロプロジェクトという見果てぬ夢を抱いたまま溺死してしまうのか。



ギリシャ:デモ暴徒化 政権の「変節」に不満 - 毎日新聞
そういえば結局引き分け再試合な感じでギリシャ問題は決着したそうで。あれだけグレジットが大きく囁かれておきながらそれを回避したのは――個人的にはギリシャ抜けたらユーロはともかく欧州連合プロジェクトはマジ終わるよ派なんですが――率直に言ってちょっと予想外でした。
そして燃え上がるギリシャ

 デモに参加した失業中のヨルゴス・パラスケボプロスさん(30)は、「緊縮策の影響を一番受けるのは、いつも貧しい労働者だ」と政府への不満を訴えた。高校教員のアリス・テオハロプロスさん(52)は「ギリシャがEUと合意した緊縮策に抗議しに来た。平和的なデモだったのに、一部のデモ隊が火炎瓶を投げたせいで解散せざるをえなくなった」と語った。

 また、財政改革法案に反対する公務員組合と薬剤師らが15日、24時間ストを実施し、国鉄や地下鉄など公共交通機関の運行に影響が出た。公務員約50万人が加わっている労働組合の広報担当はロイター通信に「5年にわたる賃金カットなどを行ってきた私たちに、EUはさらに厳しい要求を突きつけている」と憤った。薬剤師は改革法案に含まれる労働市場改革で、薬剤師になるための要件が緩和されることに反対している。

ギリシャ:デモ暴徒化 政権の「変節」に不満 - 毎日新聞

うーん、まぁ、そうね。確かに結果として問題は何も解決してないんだよねぇ。根本的に借金を減らせない構造は何も変わっていない以上、必ず再びギリシャ問題はまたやってくる。当面の預金引き出し制限等は乗り切ったものの、ギリシャの大多数の人びとにとっても何も変わらないことを意味している。
ただまぁ不満なのはそれ以外の人たちにとっても同様なわけで。だって結局問題は彼らにとっても、ユーロの問題は何も解決していないわけだから。債権者たちが「また」ギリシャにお金を投入するというだけ。


ともあれ、これって典型的な(特に上下関係がそこまで顕著でないゆるく平等な)集団内秩序維持における難しい問題だよなぁと。つまり今の問題って雑にまとめると、その内部に基本原則としてあるはずのルールを守らなかった不実なプレイヤーを私たちはどう扱えばいいのか、という地域社会から友人関係などの私たち自身にとっても結構な身近なお話に似た構図でもあると思うんですよね。
その集団の空気を考えると違反者を処罰をすることも切り捨てることも簡単にはできないし、そもそもその決断を誰が下すのかっていう。
――そこで日本社会的にも結構ありがちなよくある解答の一つが「空気を読んで自発的に違反者が抜ける」というモノでもあるわけですけども、問題はそれが成されず違反者が開き直って俺は悪くないと言い出した時なんですよ。ここで集団内にあったルールだけなく抜本的な力関係をも巻き込みながら集団の存在自体をめぐっての根本的論争が生まれることになる。これネトゲのチームやギルドで散々見たことあります。
結果として、開き直ったルール違反者を改心させることもかといって追い出すこともできずに四苦八苦する集団という感じで愉快なお話ですよね。




ギリシャがユーロ内ルールを破り続けてきたことは、ルールの是非はともかくとして、やっぱり事実であるわけで。やはり是非はともかくとしても、ユーロにはそこに属する為の『義務』やルールが存在するわけですよ。でなければ同じ通貨なんて使えない。
しかしそうした財政均衡といったルールはこれまで結構曖昧にやってきたこのもやっぱり事実である。違反も行き過ぎなければこれまで黙認されてきた。ところがそれをやり過ぎたのがギリシャであり、その上でギリシャは開き直り「そもそもこのルールって必要か?」と言い出している。まぁ実は概ね正論でもあるんですが。
――しかしだからといって、この期にそんな違反者の声にそのまま従うことも今後の集団内秩序を考えれば難しいでしょう。それを認めてしまったらこれからのユーロという集団の維持運営はどうすればいいのか?


完全な敗北こそ誰もしなかったが、誰も勝てなかった。不毛すぎる引き分け再試合の決定。
それでも、ユーロというプロジェクトを既存方針のまま延命することだけはできた。
彼らはまさに大ユーロプロジェクトを愛し、尚もその未来に期待している故に、そう簡単にユーロを諦められない。その進むべき道を容易に変えられない。その希望さえ諦めてしまえば実は楽なのにね。


絶望的な状況の中で、それでも一縷の希望を信じ続ける人たち。理想を抱いて溺死するパターン。
まぁ端からそんな様子を見ていて、笑えばいいのか悲しめばいいのかよくわかりませんよね。