「いいことなんてなーんにもなかった」の末路。
決断迫られるギリシャ、失うものは何もない 債権団の提案を拒否し、デフォルトした方が得策 | JBpress(日本ビジネスプレス)
ギリシャがプレーしているかもしれない4つのゲーム 期限迫る支援交渉、まるで「理由なき反抗」のチキンレース | JBpress(日本ビジネスプレス)
ということでいよいよ修羅場なギリシャさんちであります。政治統合や通貨統合という『実験』という意味では、端から見ている分にはとっても愉快な光景ではあるので、これまでもうちの日記では何度も書いてきたネタではあるんですが、これ修羅場るの何度目だっけ。
でもまぁ今度は、今度こそはいよいよほんとにヤバそうだなぁと。
交渉のテーブルの片側の不確実性は反対側の不確実性を高めるばかりだ。もし双方が相手の計算が変わりつつあると考えたら、合意をまとめるために何をする必要があるかについて適正な評価を行うのが難しくなる。
残念ながら、現在ギリシャと債権者の間で繰り広げられている「ゲーム」は、ケンブリッジのセミナー室での高度な演習というよりは、むしろ映画「理由なき反抗」のワンシーンに似ているように見える。2台のクルマが崖に向かって突っ走っており、どちらのドライバーも相手が先に度胸を失うのを待っている場面だ。映画では、片方が崖から落ちてこのシーンが終わる。
ギリシャがプレーしているかもしれない4つのゲーム 期限迫る支援交渉、まるで「理由なき反抗」のチキンレース | JBpress(日本ビジネスプレス)
まぁなんというか「失うものはなにもない」とか「崖に向かって走るチキンレース」とか、お互いに核兵器の絡む大戦略でもやっているのかな？ という位の狂人理論――マッドマンセオリーな駆け引きですよね。相手に自分を狂人だと思わせることで、相手に自分が周囲を巻き込んでもろとも破滅させることをも辞さないと思わせることで、相手から譲歩を引き出そうとする。
そもそも何故こんな駆け引きになるかって、相対する両者がお互いに正直さ誠実さを信用できないからこそ、その代わりに自身の「狂気」を盾に交渉する。上記では「理由なき」反抗なんて仰っていますけども、むしろ「信頼関係なき」反抗である故にそれはチキンレースに陥っているのです。
まぁ確かに敵対的な米ソ対立まっただ中な時代の外交政策ではそれもありえたんでしょうけども、でも曲がりなりにもただの友好国どころか同じ政治統合を目指している両者がこんなことやっていて、ほんともうダメだこいつら感がすごいよねぇ。
個人的にはこれまで、欧州統合というプロジェクトにそれなりに期待しているのもあって、統合の可逆性を認めギリシャが抜けるとか絶対に避けるべきだよなぁと思っていたんですが、事ここに及んではもういっそ抜けた方がマシなのかもなぁと少し思いつつあります。
――だって、もう両者の間に致命的までに信頼関係が欠如しているじゃないですか。
明るい未来に加盟希望だわ - maukitiの日記
先日の日記でも書きましたけど、欧州統合を進めていく上で重要なのは「仮に今は辛くても未来にはいいことがある」と信じられることなわけですよ。しかしギリシャは最早そんなことまったく思えなくなってしまった。まぁ確かにそう思うこと自体は自然な流れではありますよね。債権者側の「言うとおりに」やった結果が、戦争に負けたのかっていうくらい劇的な（25％にもなる）経済規模縮小だったわけで。
こんな過去があってもうギリシャがドイツなんかを信頼できるはずありませんよね。そしてひいては「きっと未来はよくなる」なんて信じられるわけがない。むしろ感情としてはユーロに入って「いいことなんてなーんにもなかった」方がより近いでしょう。
こうして最低限の信頼関係さえ無くなると、まさに両者の駆け引きは、お互いの最低限あるはずの信頼関係に基づく話し合い・取引ではなく、上記のような狂人理論のような様相を呈するようになる。
ぶっちゃけ合意内容どうこうよりも、今後ユーロや欧州連合にとって重い負担となるのはこちらの方ではないかと思います。最低限の信頼関係――言わずとも守られるルールや、一時的にはこちらが譲歩しても相手はいつか相応の借りをこちらに返してくれるだろう期待――が無くなれば、必然的に取引費用は増大するわけですよ。相手が約束を守ってくれる、あるいはこちらに借りを返してくれるか解らない以上、その可能性をも考慮に入れた選択肢しか誰もが採れなくなっていく。
かくして長期的なリターンを期待できなくなり、各国は短期的個人的な利益を追求するようになる。
まぁこうなったら、集団としての欧州統合なんて終わりですよねぇ。ぶっちゃけそんなことになる位なら「まだ」ギリシャを切り捨てたうえで、最低限の信頼関係をユーロ加盟国の間に確保した方がマシではないかと。
みなさんはいかがお考えでしょうか？
