勝者の居ない2015年

まぁ勢力均衡ってつまるところそういうことでもあるんですけど。


2015年の世界像 - ロシア・ビヨンド
2015年国際関係の概観について面白いお話。「2015年は各プレイヤーたちがこぞって黄金時代への回帰を目指した年だった」ですって。
まぁ言われて見れば概ねその通りだったかなぁと。アメリカ一極時代が終わりつつあることで、当然その恩恵を受けていた国際社会の中心人物たちはその構図を出来る限り維持延命しようとするし、一方でそんなアメリカ相対的衰退に機を見ることでこちらも当然自らが考える『黄金時代』を実現しようとする。
かくして誰もがあるべき理想像を夢見る時代に突入しつつある。まぁ面白い時代ということはできるかもしれない。

 2015年は、「世界のシステムはますます新たな危機を生む深刻な不均衡の状態にある」という明白な事実にもはや誰も異を唱えなかった最初の年となった。多くの人は、かねてからそれを知っていた。しかし、この事実を頑として認めたがらなかった。すなわち、「万事順調であり不可避的な過去の再現はピンポイントで除去できる」という20世紀末の快適な認識を放棄したがらなかった。

2015年の世界像 - ロシア・ビヨンド

でも夢を見たからってそんなに上手くいくわけもなく。
実際そんな『黄金時代』を目指した・阻止しようとした綱引きである、(去年から続くクリミア含む)ウクライナ東部にしても、中国の九段線内での埋め立ても、事実上構図としては変更され固定化したものの、かといって完全に成功したわけでもない、というのは面白い着地点だよなぁと思います。
最早クリミアを今更「以前」に戻すことは不可能だし、それはあの南シナ海の埋め立ても同様でしょう。彼らは見事に現状を変更してみせた(いやまぁ彼ら自身に言わせればそれこそ『現状』を回復したに過ぎないと言うんですけど)。しかしその代償も、経済制裁や対中観悪化やアメリカ介入として、彼らはまた支払っているわけで。


一方で(私たち日本含む)現状維持勢力の努力もまぁ見事に失敗しまくっている。
素晴らしき21世紀である2015年では最早国境線を実力で変更させるなんてこと不可能であると、善意の平和主義者たちは素朴に考えていたはずだった。ところがクリミアでは見事にそんな幻想はぶち壊され、一方で南シナ海での中国の埋め立てについてほとんどの人が「やり過ぎだ」と考えていても、しかし今更元に戻すなんてもう不可能でしょう。そのもう一つの筆頭事例が現在のシリアとイラクを中心としたポスト『アラブの春』世界でもある。
まさに上記リンク先で言われているような、「過去にあったような『愚行』の再現」は、ピンポイントで一時の後退に過ぎず国際社会の圧力と努力によって止められる、と信じていたのはまったくの幻想であり夢物語でしかなかった。




私たちが幾ら努力しても、シリアもイラクウクライナ南シナ海も、一度変わってしまったものを元に戻すのは無理なものは無理だったし、
そもそも(横暴で我が侭なアメリカを退ければできるはずだった)一致団結すらできなかった。


私たちができたのはせいぜい被害拡大を食い止めて後は神に祈るだけ。「国際社会」を無邪気に信じていた日本人からすれば、見事にその無力さが露呈した2015年だったかなぁと。来年こそ良い年であるといいね。むりそう。


みなさんはいかがお考えでしょうか?